「自分さえよければいいのか」

 あれから2年。片岡町長の胸の内を聞くために町役場を訪ねた。

 「私は(誘致の可否に)ニュートラルな立場。町の皆さんには、調査が必要か自分で判断できるように勉強してほしいと思っている。今は感情的になりすぎです」と淡々と語った。

 続けて、こう力を込めた。「原発立地自治体など、最終処分場が立地できそうな自治体には、文献調査をしてほしいと国がお願いすべきだ。自治体に責任を押し付ける今のやり方が続くなら、私が手を挙げて核ごみの問題に一石を投じた意味がない」

 2年前、脳裏に思い描いていたのは、寿都町、神恵内村以外の自治体が次々と文献調査に手を挙げ、全国的な議論が湧き起こっている未来だったのかもしれない。だが、現実はそうなっていない。言葉の節々に、焦燥感が漂った。

「核ごみ問題に一石を投じた」と語る片岡町長。胆振東部地震で大規模停電が起きたことがエネルギー政策に関心を持つきっかけとなった
「核ごみ問題に一石を投じた」と語る片岡町長。胆振東部地震で大規模停電が起きたことがエネルギー政策に関心を持つきっかけとなった

 片岡町長がエネルギー問題に関心を持ったきっかけは、18年9月に最大震度7を記録した胆振東部地震だった。北海道で日本で初めての大規模停電(ブラックアウト)が発生。北海道電力管内の全地域が停電した。

 寿都町も約27時間、電力の供給がストップ。片岡町長は「安心、安全な町づくりとは何か」と改めて考えた。

 原発が国内で稼働しておよそ半世紀。核ごみの問題が全国的に議論されていないことに疑問が湧いた。「寿都町の近くには泊原発もある。電力の供給も受けてきたのにそこから出るゴミはいらないという短絡的な話でいいのか。そんな無責任な大人でいいのか。自分さえよければいいのか」。自問自答した。

 見通しの厳しい財政事情も悩みの種だった。寿都町は全国で初めて町営の風力発電設備を設置したことで知られる。町のやっかいものだった風を、地の利を生かして利益を生み出すものに変えた。町内に11基ある風車は町のシンボルになった。風力発電の収入は年間7億~8億円あり、ふるさと納税と並ぶ重要な収入源だ。

 もっとも、固定価格買い取り制度(FIT)が順次期限を迎え、将来風力発電の収入は細ることが見込まれる。10億円を超えているふるさと納税の収入も永遠に続くとは限らない。高齢化で人口も減っていく。そんな危機感から町を発展させる新たな産業を模索しているが、明確には見つかっていない。

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