深夜の牛のケアも欠かせない酪農は、長時間労働をどうやって減らし、働き手を確保するかが課題。そこで牛にも人にも役立つデジタルトランスフォーメーション(DX)を目指し、新興企業の取り組みが進んでいる。

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 「365日、ほぼ休みのなかった酪農業の働き方を変えるにはDXの利用が効果的だ」。北海道帯広市のスタートアップ企業、ファームノートの下村瑛史社長はこう語る。

 国の統計では酪農の1人当たり年間平均労働は2057時間と、製造業より219時間も多い。ただ、酪農家に聞くと「早朝3時から夜8~10時まで働く日もあるので本当はもっと長いはず」といった声が珍しくない。スポット的に酪農家の仕事を手伝う酪農ヘルパーもいるが、人材は取り合い状態だ。常時雇用されている人の働き方改革が欠かせない。

ファームノートの下村社長は、牛の行動データ分析によって酪農家の事務作業を効率化できると語る
ファームノートの下村社長は、牛の行動データ分析によって酪農家の事務作業を効率化できると語る

 同社は設立から9年の新興ながら、全国約1800戸の酪農家をユーザーとして抱えている。作業を効率化する主力サービスではまず、牛にセンサーを取り付けて動きを3次元で把握する。さらに食べた餌の量や乳量、健康状態のデータなどと統合し、その分析結果をクラウド上で保管する。下村社長は「酪農経営に役立つアルゴリズム(計算分析手法)を頻繁にアップデートしている」と胸を張る。

牛を育ててシステムも育成

 2020年からは実際に自分たちで牛を育てる酪農にも参入し、どうしたらIT(情報技術)サービスが役立つか検証している。北海道中標津町に自社牧場があり、この改善活動を担っている。

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