深夜の牛のケアも欠かせない酪農は、長時間労働をどうやって減らし、働き手を確保するかが課題。そこで牛にも人にも役立つデジタルトランスフォーメーション(DX)を目指し、新興企業の取り組みが進んでいる。
■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・税金投入で小麦価格維持の矛盾、「9割輸入依存」の痛恨
・逆風の国産小麦を救え、敷島製パン盛田社長の奮闘
・「安すぎるコメ、消える農家」大手卸の神明、藤尾社長の焦燥
・アイリスオーヤマ、家電ノウハウでコメ再興 大山会長に聞く
・海外から農産物、買えないリスクを直視せよ 江藤拓元農相に聞く
・モー大変、牛乳が余ってもチーズにしにくいジレンマ
・水産大国陥落、「サンマ1匹1万円」の裏に日ロ関係悪化が
・漁業を救え、近大マグロからフグ、タイのゲノム編集まで
・牛も飼育員も眠れない、酪農DXで仕事環境を改革する(今回)
・和牛、飼料コスト高が直撃
・昆虫食、普及のカギは見た目
・ポンジュースの危機 ミカンが消える
・大企業は農家の脅威か ローソンとセブン
・ブランド化のEC産直、ギリギリの卸売市場
・日本農業の夜明け、3つの提言
「365日、ほぼ休みのなかった酪農業の働き方を変えるにはDXの利用が効果的だ」。北海道帯広市のスタートアップ企業、ファームノートの下村瑛史社長はこう語る。
国の統計では酪農の1人当たり年間平均労働は2057時間と、製造業より219時間も多い。ただ、酪農家に聞くと「早朝3時から夜8~10時まで働く日もあるので本当はもっと長いはず」といった声が珍しくない。スポット的に酪農家の仕事を手伝う酪農ヘルパーもいるが、人材は取り合い状態だ。常時雇用されている人の働き方改革が欠かせない。

同社は設立から9年の新興ながら、全国約1800戸の酪農家をユーザーとして抱えている。作業を効率化する主力サービスではまず、牛にセンサーを取り付けて動きを3次元で把握する。さらに食べた餌の量や乳量、健康状態のデータなどと統合し、その分析結果をクラウド上で保管する。下村社長は「酪農経営に役立つアルゴリズム(計算分析手法)を頻繁にアップデートしている」と胸を張る。
牛を育ててシステムも育成
2020年からは実際に自分たちで牛を育てる酪農にも参入し、どうしたらIT(情報技術)サービスが役立つか検証している。北海道中標津町に自社牧場があり、この改善活動を担っている。
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