新型コロナウイルス禍で外食や学校向け需要が減ってしまい、行き場に困った牛乳は社会問題にもなった。それでも国産の貴重な栄養源だが、餌は輸入に頼り、供給コストが急上昇。生き物なので乳量の制御は難しく、「余剰」というイメージが付いたことに酪農業と乳業は戸惑う。逆にチーズ市場は近年拡大してきたが、こちらに生乳を使いたくても難しい事情がある。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
税金投入で小麦価格維持の矛盾、「9割輸入依存」の痛恨
逆風の国産小麦を救え、敷島製パン盛田社長の奮闘
「安すぎるコメ、消える農家」大手卸の神明、藤尾社長の焦燥
アイリスオーヤマ、家電ノウハウでコメ再興 大山会長に聞く
海外から農産物、買えないリスクを直視せよ 江藤拓元農相に聞く
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・「コオロギから機内食」新たんぱく源と環境問題の一石二鳥
・サンマ1尾で1万円時代
・ゲノム編集&養殖の進化は漁業を救うのか
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・大企業は農家の脅威か ローソンとセブン
・ブランド化のEC産直、ギリギリの卸売市場
・日本農業の夜明け、3つの提言

 「生乳過剰のイメージが強くなってしまったが、酪農経営が大変になっていることを消費者の皆さんに理解してもらわないと乳業が立ちゆかなくなる」。雪印メグミルクの小板橋正人常務は苦渋の表情を浮かべた。

 コロナ禍によって多くの小学校が学級閉鎖に追い込まれ、2021年冬には加熱殺菌して牛乳にする前の「生乳」が余った。国や業界団体は必死に消費キャンペーンを展開。例えばローソンもホットミルクを半額にして販売し、消費拡大を応援した。その結果、どうにか生乳廃棄を免れたのは記憶に新しい。

雪印メグミルクの小板橋常務は、飼料コスト高騰で酪農経営が厳しくなっていることに危機感を募らせる
雪印メグミルクの小板橋常務は、飼料コスト高騰で酪農経営が厳しくなっていることに危機感を募らせる

生乳コストは1割上昇へ

 こうした需給関係のみで考えると、モノの値段は下がることになる。しかし牛は生き物なので、給食がお休みになったからといって、餌を食べるのを「お休み」にはできない。この連載で見てきた通り穀物相場は急騰しているから、酪農家の経営は厳しくなる。

 大手乳業はJAグループのような酪農団体から生乳を買い付けており、期間ごとに交渉して価格を決めている。今年8月4日には北海道のホクレン農業協同組合連合会と、緊急的な協議が決着。牛乳向けの生乳は11月から、1kg当たり10円(8.2%)引き上げることが決まった。年度の途中で乳価が上がるのは9年ぶりだ。

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