コメは日本が自給できる、貴重な食料の1つだ。ところが新型コロナウイルス禍による外食需要の減少は、パンよりはるかに大きなダメージをコメに与えた。諸経費の増加分すら価格転嫁できず、離農が相次ぐという窮地に陥っている。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
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 「コメの値段が上がらないと、生産者は活動を継続できない」──。7月27日に農林水産省が開いた食糧部会。そこでコメ卸最大手、神明ホールディングスの藤尾益雄社長はこう主張した。安く買えたほうがもうかるのは商売の基本だが、その逆の要請。大手卸として異例の展開だった。

 後日、その真意を聞きに行くと「このままでは農家が半減し、今まで余るほどあると思われていたコメは不足の時代を迎える」と危機感をあらわにした。

藤尾益雄(ふじお・みつお)氏
藤尾益雄(ふじお・みつお)氏
1965年兵庫県生まれ。芦屋大学教育学部卒、89年神明(現神明ホールディングス)入社。専務取締役などを経て2007年から代表取締役社長。
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 日本の農家(基幹的農業従事者)は2000年以降の22年間でほぼ半減し、122万人となった。しかも、その過半は70歳以上が占めている。「今から20年後には彼らがリタイアしており、農家数が再び半減するということだ。現時点で29歳以下の農家は全体の1.2%しかおらず、再生産可能な価格を下回るようなコメは特に厳しい」(藤尾社長)

 かつてコメは年間8万トンずつ内需が減るといわれ、さらに近年は年間10万トン減へとペースが速まったと推計された。しかし、22年7月~23年6月の需要予測692万トンに対し、22年産米の想定生産量は675万トンと、もはや供給のほうが少なくなる見通しだ。需要減のスピードより、生産基盤の弱体化のほうが速いのかもしれない。

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