世界的に経済圏が分断されようとする中、国内回帰、中国から他地域への生産移転など、企業はサプライチェーン(供給網)を見直し始めた。国内集中生産を貫いてきたのが、コンピューター数値制御(CNC)装置で世界首位のファナック。揺るぎない国産哲学の核心に迫るべく、山口賢治社長兼CEO(最高経営責任者)に話を聞いた。

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ファナックは売上高の85%が海外で、グローバル供給網を強化するために消費地生産の戦略を採ることもできました。しかし、これまで海外に生産移転はせず、国内で一極集中生産を続けてきました。国内生産で競争力を保持できている要因は何でしょうか。

山口賢治[やまぐち・けんじ]氏
山口賢治[やまぐち・けんじ]氏
1968年生まれ。93年東京大学大学院修了、ファナック入社。生産技術畑を歩み、工場自動化を推進。2008年専務、12年副社長、16年社長、19年4月から社長兼CEO。福島県出身。(写真:菊池一郎、以下同)

山口賢治社長兼CEO(以下、山口氏):ファナックが造っているのは、企業が生産活動をする際に使われる「生産財」であるため、そもそもの物量が少なく、地産地消的な生産ではコストや品質面でメリットがありません。ですから、日本で一極集中生産をしてきました。工場自動化に使われるので、安い労働力を求めて海外生産をしていては、商品の説得力がなくなってしまいます。

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