地方財政が逼迫するなか、どうすれば民間と協力してインフラ整備を進められるのか。PPP(官民パートナーシップ)・PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の活用について、森・浜田松本法律事務所のパートナー弁護士である佐藤正謙氏と岡谷茂樹氏に話を聞いた。

岸田政権はインフラ整備に向けて、PPP・PFI市場を今後10年間で30兆円にするとの目標を掲げました。関連する法律など制度面では、どのようなてこ入れが必要でしょうか。

佐藤正謙、森・浜田松本法律事務所パートナー弁護士(以下、佐藤氏):法整備はこれまでの政府対応によってかなり進んでおり、各種のガイドラインも整ってきました。今後、例えば資金循環をより円滑にすることは考えられます。例えばPPP・PFI事業の主体となる特別目的会社(SPC)の株式を流動化しやすくして、最初に資金を投下した人がセカンダリー市場で他者に売り、そこで得た資金で再び別のプロジェクトに投資するといった形です。

 (当初の)プライマリーでの投資については十分な制度が構築されており、あとはそれをいかに実行に移すかが課題です。各自治体が現状と将来の構造問題を冷静に分析し、危機感を持って官民の連携を進められるかが重要でしょう。

岡谷茂樹、森・浜田松本法律事務所パートナー弁護士(以下、岡谷氏):やはり、各地の住民が地元のインフラ維持のあり方について、向き合うべき時期を迎えています。官に任せたまま、料金引き上げや増税となると「官の努力が足りないからだ」と決めつけてしまうのは限界が来ています。既に地方自治体の職員はかなり減少し、高齢化も目立っています。多くの地域で公務員の採用を絞っており、もはや官だけではインフラの維持に必要な人員さえ確保が難しくなりつつあるのです。

 そこで民間に任せるとなった際、「民間企業は利益を追求するだけではないのか」と一方的な尺度で見てしまうと、袋小路に入ってしまいます。インフラ維持のために料金引き上げや増税をしないと事業が成り立たないのか、あるいは値上げや増税をしなくて済む範囲でインフラを維持するのか、住民が主体性をもって考えなければなりません。

PFI活用への制度整備は進んでおり、自治体がいかに取り組むかが問われている(左が佐藤氏、右が岡谷氏)(写真=的野弘路)
PFI活用への制度整備は進んでおり、自治体がいかに取り組むかが問われている(左が佐藤氏、右が岡谷氏)(写真=的野弘路)

地方自治体の水道事業について、PPP・PFIの一環で、施設の運営権を民間に売却する「コンセッション」方式で発注しやすいよう制度改正が進みました。受託する民間事業者への支払いには、どのような特徴があるのでしょうか。

佐藤氏:コンセッション方式は原則として独立採算型です。空港への活用が典型的で、インフラの利用料金の収入を民間事業者が設立したSPCに帰属させます。つまり、自らリスクも取る代わりに、その収入は自分で管理できるという仕組みです。

 ただ、水道の場合は重要な違いがあります。空港のようなアセット(資産)クラスなら、現在は新型コロナウイルス禍などの影響を受けていますが、オペレーションの工夫やインバウンド需要の拡大によって増収を図ることができます。一方、水道は勝手に利用料金を上げるわけにはいきませんし、何らかの附帯事業を通じた増収を見込みやすい事業モデルでもありません。

 むしろ最新技術をどのように導入・駆使するかを含めた経営ノウハウにより、コストをいかに抑えながら運営するかが求められます。水道事業については、通常の業務委託が各地で進んできた一方、コンセッションをいかに拡大するかは手探りの状況です。

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