全国の中でも、とりわけ水道管の老朽化が進んでいる大阪市。1800kmという長大な管路を取り替えねばならないが、苦戦している。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)を成功に導かないと、「水の都」と呼ばれた都市は漏水だらけで水没しかねない危機が迫る。

 「業者がゆるくもうけられるのは絶対アカンぞと言い続けて、厳しすぎたんかなと思っています」。大阪市の松井一郎市長は2021年10月、記者会見でこう語った。水道管の更新事業について、PFIの方式で民間に委託しようとしたが、いったん頓挫してしまった。事業費で3750億円を上限としていたが、価格面での折り合いがつかなかった。

大阪市は戦後に整備した水道管も残っており、老朽化がいよいよ問題になってきた。破裂して地面に水が吹き出すトラブルも起きている(2021年4月の大阪市西区での写真)(写真=毎日新聞社/アフロ)
大阪市は戦後に整備した水道管も残っており、老朽化がいよいよ問題になってきた。破裂して地面に水が吹き出すトラブルも起きている(2021年4月の大阪市西区での写真)(写真=毎日新聞社/アフロ)

 大阪市が取り替えようとしている水道管は1800kmに及ぶ。北海道網走市から鹿児島市までの直線距離とほぼ同じで、いかに巨大なプロジェクトかが分かる。これまでは水道局が中心となって様々な業者に工事を発注してきたが、年間にこなせる量は60~70kmほど。それでは更新完了まで25~30年かかる。

 ところが政府の試算では、今後30年以内に70~80%の確率でマグニチュード8~9クラスの南海トラフ地震が起きると予測されている。特に大阪市は老朽化した水道管が多く、できるだけ早く備えておく必要がある。例えば16年の熊本地震では約44万戸が断水し、地域によっては3カ月半も水道を使えなかった。

 しかも、こうした大きな地震がなくともリスクは顕在化している。既に大阪では昔の水道管が破裂して水が道路に吹き出し、復旧に当たるという事例が度々起きている。

PFIでの発注、民間リスクの見積もりが肝心

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