出所:The Sandbox(https://medium.com/sandbox-game/we-raised-93m-to-grow-the-sandbox-open-nftmetaverse-a8a2a0411d90)
出所:The Sandbox(https://medium.com/sandbox-game/we-raised-93m-to-grow-the-sandbox-open-nftmetaverse-a8a2a0411d90)

 韓国の代表的なMMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)である「リネージュ」シリーズの開発会社NCsoft(エヌシーソフト)は、21年11月の決算発表で独自の暗号資産の用意があることを明言した。また、同社が開発するすべてのゲームにPlay to Earnモデルを取り入れる可能性にも言及している。

 ただし、メタバースにNFTを取り入れようとする動きに対してはユーザーの反発もあり、賛否両論となっている。22年1月にはソーシャルVRサービスの「VRChat(VRチャット)」が公式によるブロックチェーンやNFTの統合を今後も予定していないことなどを発表した。

 NFTには技術的な限界もあるとみられる。ブロックチェーンは改ざん不可能な形で情報を記録できるため、登記情報の公示のようにデジタル資産の取引履歴を誰もが閲覧可能な形で残せる。しかし、無断で他人の著作物をNFT化しているかどうかの判断はつかない。また、デジタル資産そのものはコピー可能であるうえ、NFT上で表現された「所有」と法律上の「所有」が必ずしも一致するわけではない。

 現状、NFTが注目されている背景の1つには値上がり益を期待した投機家の存在も大きい。メタバースに必ずしもNFTが必須というわけではないし、「NFTだから」値上がりするといった言説には疑問を呈する声も多く、注意が必要である。

 一方、「Web3(ウェブスリー)」についても注目が集まっている。Web3とは、ブロックチェーンを活用した次世代インターネットとされ、ネット利用者がデータを共有・管理しながら運用する分散型のWebサービスを示す概念だ。

 自民党デジタル社会推進本部の下のNFT政策検討プロジェクトチーム(座長:平将明衆院議員)は、22年3月30日、Web3時代を見据えた新たなデジタル戦略に関する提言(案)を取りまとめた。この中で、メタバースやXR(クロスリアリティー、VR/AR/MRの総称)については、モバイル、アプリ、ビッグデータ解析に続くWeb3固有のデジタル技術の進化として捉えられている。

 また、本提言ではNFTが活用可能な分野の候補としてメタバースを挙げ、「複数のメタバースサービスでデジタル資産を相互利用する際に必要となる仕組み」としてNFTを用いる将来像が議論されているとした。

 本提言で指摘されている通り、各メタバースにおいては、ユーザー情報や作成されたデータはプラットフォームごとに管理されていることが多い。例えばVRチャットで利用しているアバターを米Epic Games(エピックゲームズ)のマルチプレーゲーム「Fortnite(フォートナイト)」では使うことができないなど、制約が存在する。このような中、各プラットフォームを統一的に扱うフォーマットの開発が進み、デジタルアセットの相互運用性が高まれば、利便性は大きく向上する。

 ただし、大切なのは、「NFTやWeb3のような技術=メタバース」ではないということだ。もちろん、メタバースの構成要素の中で、NFTやWeb3関連の技術が重要な位置を占めることはあるだろうが、絶対に必要とされる技術ではない。

 短絡的にメタバースとNFT関連技術を絡めて考える「技術オリエンテッド」よりも、メタバースを構築する、あるいは利用する中で課題が出てきたときに立ち止まり、技術によって解決できないかと考える「課題オリエンテッド」な姿勢こそが、メタバースをより良いものにしていくためには望ましいだろう。

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