巨体を操る統治体制

 みずほFGは連結総資産225.5兆円を抱える巨大銀行グループだ。S&Pグローバルのデータによると、世界で14位、日本でみても三菱UFJFG、三井住友FG、日本郵政グループに次ぐ4位の大きさとなる。これほど豊かな経営基盤を持った金融機関が迷走するのは、日本経済にとっても大きな損失だ。

 みずほの企業統治体制はその巨体を操るには不完全だ。それがシステム障害というトラブルになって繰り返し表面化する。改めて同社の現在のガバナンス体制をみていこう。

 00年に発足したみずほフィナンシャルグループは、13年になってようやく旧みずほ銀行と旧みずほコーポレート銀行を合併してワンバンク体制になった。反社会的勢力への不透明な融資問題が発覚した13年には、さらに米国型の「委員会設置会社」移行を決定している。委員会設置会社は現在では指名委員会等設置会社と呼ばれ、OBなどではない社外取締役が重要人事などを決める仕組みだ。米国ではこうした統治スタイルが主流だが、それは巨額の損失につながるCEOの「暴走」を監視する機能が必要だからだ。

 16年には銀行・証券・信託といったグループを一体運営できるように、グループを横串で通す社内カンパニー制を導入している。当時の佐藤康博社長は「Oneみずほ」を標榜したが、そこには旧3行を統合するという狙いと、銀行、証券、信託を一体運営するというもう一つの目標があった。

 みずほ全体を個人部門、大企業部門、海外部門など5つのカンパニーに分けて、例えば銀行の個人部門、証券の個人部門、信託の個人部門を「リテール・カンパニー」として一体で業務運営する仕組みだ。銀行、証券、信託といった縦割りの事業会社ではなく、カンパニーという横割りで経営する手法で、5つのカンパニーを統率する「カンパニー長」はグループ人事と戦略立案の2つの権限が与えられる。逆に銀行頭取、証券社長といったエンティティ(事業体)トップは、執行の統率という役割分担になった。

 カンパニーとエンティティが入り交じる複雑な仕組みになったのは、規制がそれぞれ異なる業法の壁があるからだが、カンパニーごとに収益目標を立てて顧客本位でビジネスをしていく大きな狙いもあった。みずほの連結業務純益は16年度の6997億円から20年度には7997億円まで増えており、表面的な収益をみれば企業統治改革の成果は着実に出ている。

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