問題を矮小(わいしょう)化する思考回路
金融当局が指摘した「みずほの闇」は、行政検査で少しずつ浮かび上がりつつあった。なぜ、みずほばかりがシステム障害を起こすのか。より正しく言えば、システム障害が起きても短時間で収束できれば問題は大きくならない。みずほの最大の問題は、軽度なトラブルの原因を根本から解析せず、放置したままさらに大きなトラブルを起こすことにある。
その理由の一つは、隠蔽体質ともいえる不祥事を極めて矮小化して扱う思考回路だ。みずほは21年2月28日の大規模ATM障害の前にも、実は18年に同じようなトラブルを起こしていた。ATMのシステムに障害が発生して、キャッシュカードや通帳が1800件も取り込まれるトラブルだったという。顧客からも大量のクレームがあったが、その日は平日だったために営業店の行員がうまく対応して社会的に表面化しなかった。当時のシステム担当者も経営陣もATMの改修といった必要な措置を取らず、対外公表も見送って金融当局にも顧客とのトラブルの詳細を報告しなかった。
21年2月に起きたシステム障害は内容が全く同じだ。新しい勘定システムにデータなどを移行する際にATMに不具合が発生し、預金通帳やキャッシュカードをATMが飲み込んで閉じてしまう。18年にATM障害が発生した際にカードや通帳を取り込まないよう設計を見直しておけば、21年2月のように何千人もの顧客に影響が出る大規模トラブルは再び発生しなかったことになる。
問題を矮小化する思考回路は、極めて根深い。ATMが停止した21年2月、システム担当者はそのトラブルの影響力を「A2」と判断している。どの銀行もシステム障害をランクづけして対処策の判断材料にしているが、A2はS、A1に次ぐ上から3番目。「行外に軽微かつ限定的な影響を及ぼす障害」という程度の扱いだった。
「A2」の場合は銀行トップには連絡が入らない手順になっている。そのため、みずほ銀の藤原弘治頭取(当時)は、自行のシステム障害をネットニュースで知ることになる。持ち株会社社長でグループCEO(当時)の坂井辰史氏も、障害発生から6時間後にメールで知ることになり、非常時の意思疎通の悪さに社会的な批判を呼ぶことになる。当初からATM障害を「A2」ではなく適切に見積もっておけば、手続き上も早めに社内に通知できて、カードや通帳を奪われた客が店内に数時間も立ち尽くすという事態はもう少し抑えられた可能性が高い。
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