世界経済フォーラム(WEF)がこのたび発表した、2022年版のジェンダーギャップ報告書で、日本は146カ国中116位だった。長らく主要先進国の中で最下位の状態が続いているが、岸田政権が企業内における男女間の賃金格差の公表義務化を打ち出すなど、ジェンダーギャップ解消に向けた具体策も表れつつある。「100人いたら100通りの働き方があっていい」という組織文化を創り上げ、選択的夫婦別姓や同性婚の実現に向けた情報発信にも熱心なサイボウズの青野慶久社長に、ジェンダーギャップをめぐり話を聞いた。

ダイバーシティ(多様性)確保をめぐって積極的な情報発信をされています。いつごろから関心があったのでしょうか。

青野慶久・サイボウズ社長(以下、青野氏):2006年ごろでしょうか。働き方の多様化とかを言い出したぐらいですかね。

かなり早いですね。

青野氏:そうですね。ダイバーシティという言葉はあまり使っていなかったですけど、「100人100通り」という言い方をして、取り組みを始めていましたね。

サイボウズ社長 青野慶久(あおの・よしひさ)氏
サイボウズ社長 青野慶久(あおの・よしひさ)氏
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月から現職。3児の父として3度の育児休暇を取得。(写真=竹井 俊晴、以下同)

当時、ダイバーシティ確保に着手した理由は何だったのでしょう。

青野氏:最初は単純に従業員の採用と定着のためだったんですよ。以前は離職率がとても高かったので、何とか下げようと。例えば、短時間勤務だとか、在宅勤務だとか、副業だとか。そうやって選択肢をいろいろと増やしていくと、辞めずにちゃんと残ってくれるようになってきた。

 気がつけば、噂が広まって、採用力が高まってきて、「サイボウズに転職したいんですけど」という人が増えてきたみたいな。そういう効果がありましたね。

 さらに言うと、いろんな人がいることのメリットも感じています。

どんなメリットですか。

青野氏:例えば最近だと、サイボウズの商品が自治体で導入され始めたんですよ。新型コロナウイルス禍をきっかけにして、クラウド上ですぐ構築できるものが欲しいということで。

 いろいろな人が入社してくれるようになったことで、サイボウズには結構、公務員出身者がいたりするんですよ。そうすると、「実は○○省出身なんですよ」「○○区役所で働いていました」っていうことで、すぐに会話ができますよね。

 多様性があると、ビジネス上で都合が良いという実感を強めています。ただ、これまではあまりジェンダーという言い方はしてこなかったんですよね。

意外ですね。どうしてジェンダーには焦点を当ててこなかったのでしょうか。

青野氏:ジェンダーと言い始めると、100人100通りという大原則が見えなくなってしまう恐れがあったからです。男性や女性というのは、その人の属性の一つにすぎません。人間には性別以外にもたくさんの属性があります。男女という生物学上の違いばかりをクローズアップすることを避けてきたんです。

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