時代の変化に応じて、玩具業界でも「男の子向け」「女の子向け」と対象を分けない動きが出始めている。長年ヒット商品を生み出しているピープルとパイロットコーポレーションは、それぞれ異なる戦略を打ち出す。
男の子がDIY(日曜大工)玩具で遊び、女の子が人形遊びをする――。少し前なら“当然”に思われていた遊びの常識が変わりつつある。玩具の選ばれ方にも変化が表れている。日本玩具協会の「日本おもちゃ大賞」は2021年から「ボーイズ・トイ」「ガールズ・トイ」の部門分けを廃止し、「キャラクター・トイ」または「ベーシック・トイ」にした。玩具の対象を「女の子」「男の子」と分ける文化をなくし、誰もが自分の好きな玩具を選んで遊べる環境づくりが始まっている。

人形商品「ぽぽちゃん」など幼児向け玩具を手掛けるピープルの桐渕真人代表は「子どもは元来、自分の性別にとらわれることなく好きな玩具に手を伸ばす」と言う。しかし、4歳を超えたあたりから「性別を意識した玩具選びをするようになる」と指摘する。
親のステレオタイプから特定の玩具を買い与えられなかったり、「それは女の子用だよ」などとジェンダーバイアス(性差に対する偏見)がかかった助言を大人から受けたりすると、それが子どもの玩具遊びに影響することがある。
「女の子でも遊べる電動ドライバー」でいいのか
ピープルは「子どもの選択肢を増やしたい」という思いから、18年にDIY玩具「ねじハピ」を発売した。「女の子でも遊べる電動ドライバーおもちゃ」として売り出しており、箱や家を組み立てることができるのが特徴だ。

ねじハピを開発したきっかけは、女性のDIY人気。テレビ番組でDIYをする女性タレントがたびたび登場し、DIYに励む女性も珍しくなくなった。しかし「大工さんセット」といったDIY玩具は「男の子向け」としたものがほとんど。そこで、ドライバー本体を薄紫のパステルカラーにしてラメを施したり、DIYパーツのねじを星形にしたりするなど、「女の子向け」とされる商品に多く見られる“かわいい”デザインを取り入れて商品化した。
しかし、工具を使ったDIYに性別は関係ないはず。ジェンダーバイアスを解消するようなコンセプトの商品であるが、あえて“かわいい”デザインしたのはなぜだろうか。偏見をなくすのであれば、性別意識を排除したジェンダーレスや性別の前提がないジェンダーニュートラルな商品にすべきではないのか。
桐渕氏は「ジェンダー意識醸成の過渡期にある現時点では、『女の子向け』に作らないと買ってもらえない。ジェンダーレスやジェンダーニュートラルはまだ早い」と説明する。
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