リモート会議で日本企業はカオス状態?

横田:ワールドワイドな経験をされた岡本さんから見て、世界のリーダーはどんなコミュニケーションスキルを有しているのですか?

岡本:ドナルド・トランプ前大統領やスティーブ・ジョブズ氏のような「強権的リーダー」もかつてはいましたが、パワハラなどが問題視されている現在、傾聴し対話する「共創的(共感型)リーダー」が傾向としては増えています。例えば、マイクロソフトを立て直したサティア・ナデラ氏などが典型的ですよね。

横田:日本のリーダーはどうですか?

岡本:日本で私がインタビューする機会があった菅義偉前首相、孫正義氏などは、相手の話によく耳を傾けますね。

 でも、日本の管理職男性は往々にして「聞くより話す」傾向にあります。オジサマは、悦に入って長い話をする。本人はその気はなくても、相手にとっては聞きたくない話は全部「説教」に聞こえるんです。若い方は、そんな話を聞かされて白ける。逆に、そんな風に思われることを恐れ、気を使いすぎて、何も言えない状況に陥っている管理職も少なくない。そして、結果的に「コミュレス」化している。

 こんな状況が、それぞれが離れたリモート会議で展開されているので、今、日本の企業はカオス状態にあります。オンライン越しには、相手のささいな状況が把握できませんから。日本企業の中で深刻なコミュニケーションの分断が起きているのでは?と強く懸念しています。

横田:そんなコミュニケーションに悩んでいる日本企業の管理職には具体的にどんなアドバイスを送りますか?

岡本:まず、自分が言いたいことを飲み込み、先程申し上げた2つの質問をすることです。まずは、訊いて、聴く。

 話を聴いたうえで、次に相手に関係ある話を次の5つのどれかに絞り、ここでようやく自分から話し始める。その5つとは、

①カネ:相手にとって損、得になること
②身近:相手の身の回りにあり、親しみやすいこと
③便利:相手にとって役に立つこと
④インパクト:相手にとって個人的、社会的にインパクトがあること
⑤悩み:相手の気になっている問題

です。「カネ(損得)チカ(近い)やく(役立つ)いん(インパクト)の悩み」の語呂から、「兼近役員の悩み」とすれば、覚えやすくありませんか?

横田:とても覚えやすいですね! コミュニケーションを極めている岡本さんにとっての今後の展望は?

岡本:「もっと話をしたい、聞いてほしい」というニーズが大きいから、スナックでもやろうかと真剣に考えています(笑)。「マウント禁止!」がナンバーワンルールです。誰もがフラッと立ち寄って、フラットなおしゃべりを楽しめる場があったらいいですよね。

横田:開店したら通わせていただきます(笑)。拙著の中でも大きなメッセージとして「相手を想え」を掲げています。対談を通じてですが、伝え方の手法は色々違えど、軸として大きな共通点を感じました。本日はありがとうございました。

岡本氏の「スナック開店宣言」など、対談は大いに盛り上がった(写真=稲垣純也)
岡本氏の「スナック開店宣言」など、対談は大いに盛り上がった(写真=稲垣純也)

~インタビュー後談~

 1000人を超えるトップエグゼクティブなどへ助言を送り続ける岡本さんは、「伝説の家庭教師」の称号を得た今もってなお、分かりやすく伝える工夫を続けています。少しでも読者の頭に残るように語呂合わせしたり、世界の中の日本の立ち位置を示したり、論文やデータを基にした論拠を分かりやすく書籍に落とし込んでいます。
 対談を通じ、相手に伝えることの重要さ、難しさ、終わりがない奥深さを痛感しました。(横田伊佐男)

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