読者はすでに、量子コンピューターで効果が高まるよう「最適化」されたテレビCMを目にしているかもしれない。リクルートは2021年から自社のテレビCMを、決められた出稿枠のなかで効果的に視聴者に見てもらえるよう、素材や出稿タイミングを最適化するのに量子コンピューターの活用を始めた。同社は18年ごろに宿泊予約サイト「じゃらんnet」の選択肢の提示の最適化などで国内でも先駆的に取り組んでおり、そうした事例を紹介する。

【ラインアップ】
(1)量子技術を社会実装へ 日本の逆転の布石は打たれた
(2)量子コンピューター開発はこれから 諦めないNECと富士通
(3)量子に会社の将来を懸ける東芝 NTTも標準化争いに名乗り
(4)図解で分かる量子技術 量子コンピューターはどのように計算する?
(5)量子が分かるこの5冊 基礎知識からビジネスアイデアまで
(6)TVCM配信も「じゃらん」検索表示も リクルートが量子で最適化(今回)
(7)QXの現場 NECフィールディング、量子で配送コスト30%減
(8)日本惣菜協会、清水建設…DX遅れる現場で量子計算をどう生かす
(9)損保ジャパン、SMBC…金融でも量子活用 リスク分析や不正検出
(10)尾原和啓氏「未来の進化は圧倒的 量子技術どう生かすか想像を」
(11)米IBM研究トップ「量子コンピューターは新次元の発明だ」
(12)「日本の研究者の質は高い」伊藤公平慶応義塾長・量子検討WG主査
(13)ケネディ政権の伝統継ぎ米国が量子開発急ぐ、中国の後塵許されず
(14)日の丸量子技術で巻き返し、トップ研究者「技術的課題を突破する」
(15)「もうけ続ける仕組みつくれ」量子議連・大野敬太郎衆院議員
(動画)1分でサクッと分かる 量子コンピューターの世界
(動画)6月27日号特集「量子の世紀」を担当記者が解説

(写真:Shutterstock)
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 暑い日が増えてきた。テレビを眺めていると爽快なビールのCM。俳優が昼間に海辺のデッキで楽しむシーンが流れたかと思えば別の時間帯には和食で舌鼓を打つシーンも。何種類も見ているうちに、気づけば散歩がてらスーパーの前へ――。

 当たり前のように流れているテレビCM。どの時間帯にどのCMを流すかを決めるのに、量子コンピューターの「最適化」技術を取り入れ、良い結果を出している企業がある。リクルートだ。

多様なCM視聴は92%増

 就職情報サイト「リクナビ」や飲食店サイト「ホットペッパー」、結婚情報誌「ゼクシィ」など幅広いサービスを提供するリクルート。同社は2021年から、自社サービスのテレビCMを、決められた出稿枠のなかで効果的に視聴者に見てもらえるよう、出稿枠を最適化するのに量子コンピューターの活用を始めた。

 活用したのはカナダのDウエーブ・システムズ(Dウエーブ)が21年に発売した、アニーリング方式の量子コンピューター「D-Wave CQM」だ。といっても純粋な量子コンピューターでは解ける問題の大きさに限界があるため、従来のコンピューターで量子の要素を取り込んだ「疑似アニーリング」とのハイブリッドのコンピューターだ。

 リクルートでは同コンピューターの活用で、代理店が主に手動で出稿枠を決める従来の割り当て手法に比べて、全種類のCMを視聴した視聴者を92%増やした。これまで広告代理店任せだったCMの割り付けを自社で提案できるようになり、視聴者に製品やサービスの幅広い魅力を伝えられるようになったという。

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この記事はシリーズ「量子コンピューター革命~DXの先にあるQX」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。