外部の目として不正の発見を期待されている監査法人が、デジタル技術の導入を急いでいる。過去の不正会計の手口を学ばせたAI(人工知能)に財務データを分析してもらい、不正の芽をいち早く発見しようという試みだ。前回記事で紹介した「不正のトライアングル」に当てはめると、不正の「機会」をなくす対策といえる。ハイテクの力で監査の質が高まれば、不正の抑止にも役立つだろう。東芝問題で一躍注目を集めたデジタルフォレンジック(電子鑑識)技術についても紹介する。

特集の予定ラインアップ
イカサマを絶つ はびこる不正、若手官僚も墜ちた悪の道
川崎重工、SMBC日興… やまぬ不正、「組織ぐるみ」で企業に打撃
売り上げの4割「架空」も 成果重視の株主資本主義、企業に重圧
三菱電機をむしばんだ同調圧力 不祥事が暴く「日本品質」の危機
トヨタ車検不正、第一生命19億円詐欺… 再発防止期す企業に学ぶ
・AIが暴く不正会計、監査にDXの波 東芝問題で注目の電子鑑識とは?(今回)
・不正が起こるのは経営の失敗、社員「性弱説」で対策を 識者が語る

 監査法人トーマツはこのほど不正のリスクを検出するAI(人工知能)を開発し、まずグローバル展開する30社程度に導入した。どこも海外に数多くの子会社を抱える。財務情報が膨大なため、AIで省力化しつつ不正やミスを早期に検知できるようにする。

 開発はまず過去の不正データをAIに学習させることから始めた。過去15年以上の間に公開された不正事例や有価証券報告書を基に、不正特有の財務指標の傾向を抽出した。

 このAIを使うと、グローバル企業傘下の子会社数百社を「不正スコア」が高い順に並べるといった芸当が簡単にできる。不正スコアを構成するのは「棚卸し資産回転期間」や「売上高総利益率」「売掛債権の増減率」といった大量の財務データだ。

決算発表のピーク日、報道機関向けに資料を投函(とうかん)する企業の担当者。膨大な財務データの中に潜んだ不正をAI(人工知能)が暴く日が近づいている(2020年10月、東京証券取引所、写真:共同通信)
決算発表のピーク日、報道機関向けに資料を投函(とうかん)する企業の担当者。膨大な財務データの中に潜んだ不正をAI(人工知能)が暴く日が近づいている(2020年10月、東京証券取引所、写真:共同通信)

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この記事はシリーズ「イカサマを絶つ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。