(写真:PIXTA)
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 明日、2022年7月1日から、教員免許更新制が廃止される。教員免許は10年に1度の更新が必要だったが、それがなくなることになる。この制度変更について、公教育関係者の間ではかなり大きな話題となっているが、なかなかビジネスの世界では注目されていない。

 本制度の廃止は、変化の激しい時代に即した公教育の対応という側面もある。だが、5年後、10年後には次の日本を担っていく今の子供たちが受ける公教育が、時代の要請に応じてどのように変化し続けているのかということをぜひ公教育関係者以外の方にも知ってほしい。そして、皆で日本の教育を支えることが、良き未来社会づくりにつながっていくことを信じている。

 筆者は、文部科学省で広報戦略アドバイザーを務めつつ、民間企業でも教育領域の官民共創業務に従事している。この立場から、今回の教員免許更新制廃止が産業界にどのような影響を及ぼすのか、教員を取り巻く現状にも触れながら解説したい。

 教員免許を取得するためには、原則として、大学などの教職課程の単位を習得する必要がある。教員を目指す人はこの過程で「教育の基礎知識や指導技術に関わること」や「教科および教科指導に関わること」などを学ぶ。

 指定された内容を履修し、単位を習得した上で無事卒業したら教員免許取得資格を獲得。都道府県教育委員会に申請することで、晴れて免許が授与される。教員免許取得者は各都道府県や政令指定都市が実施する教員採用試験を受験してこれに合格することで、教員として教壇に立つのが一般的な流れだ。

 もともと、教員免許は、大学等で単位を習得して一度授与されれば、無期限で有効だった。だが、2003年の学習指導要領一部改正が行われたころから始まった「教育再生」の流れの中で、教員は定期的に最新の知識を身に付け、資質能力を保持する必要があるとの考えが広がった。

 結果、10年に一度、30時間以上の講習を受講して免許を更新する制度、いわゆる「教員免許更新制」が09年4月に導入された。これによって、本制度の導入以後に教員免許を取得した人は、取得から10年経過する前に講習を受けていなければ失効することとなった。

 「教員免許更新制」は、定期的な知識の研さんの機会を確保するという点では意味があったものの、教師に強いる負担が大きかった。ただでさえ日常業務で手が回らない教師にとって、長時間にわたる受講時間の確保は難しい。加えて、遠く離れた大学まで通うための時間的な負担や、受講料の合計が約3万円という金銭的負担もあった。

 何より、変化の激しい社会において、常に最新の知識技能を学び続けていくという理念と10年に一度の更新という制度が、もはや整合的ではなくなってしまっていた。

 文科省は教員免許更新制を「発展的に解消」。研修受講履歴を記録しながら、教育委員会や校長と教員が対話し、適切な研修の受講を奨励していくスタイルに転換した。この改正によって、教員免許そのものは再び無期限となった。

 学生時代に教員免許は取ったものの、一度も教壇に立つことなく民間企業などに就職した、いわゆる「ペーパーティーチャー」も少なくない。今回の教員免許更新制廃止により、教員免許更新制導入以前(09年3月以前)に取得した人の教員免許は、明日7月1日以降は何ら手続きをしなくても教員免許として有効となる。

 一方、教員免許更新制導入以後に免許を取得した人は、上述の通り、取得から10年経過する前に講習を受けていなければ失効していたが、大学時代に習得した単位の効力自体は残っているため、教育委員会に申請すれば教員免許を再取得できる。

 正確性を期したために長い説明になったが、端的にいえば過去に教員免許を取得していた場合、教員免許の更新をせずに失効していた人は、明日以降は再申請すれば無期限有効の教員免許状が得られるということだ。こうした人たちも、教育委員会などによる選考や研修などを経て、再び教壇に立つことが可能になる。

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