イーロン・マスク氏が2022年10月下旬に米ツイッターを買収して以来、収益の源泉である広告出稿が激減した。トランプ前米大統領など過激な発言で停止となったアカウントを復活した行動が、大手広告主に敬遠されている。株式を非公開化し、自由奔放なかじ取りを続けるマスク氏は、「言論の自由」と「広告の確保」を両立できるのか。

「ツイッターに戻ってきてくれた広告主に、ただ感謝を伝えたい」。そんなつぶやきを投稿するほど、マスク氏の危機感は高まっていた。
自身の買収に伴い、ツイッターは約130億ドル(約1.8兆円)の債務を負った。だからこそ、真っ先に従業員7500人の半数を削減し、人件費の抑制を狙った。解雇の混乱が続く中で、別の問題も浮上してきた。ツイッターの広告主が逃げ出したのである。
買収前の決算資料によると、ツイッターの売り上げの9割は広告によるもの。その重要性を熟知していたマスク氏は2022年10月下旬の買収と同時に「ツイッターの広告主へ」と題したつぶやきを投稿している。「皆さまのブランドを強化する尊敬される広告プラットフォームでありたい」などとメッセージを伝えた。
米フリープレスなど50以上の活動団体は、ツイッターが安全性を損なう計画を実行した場合、ツイッターへの広告出稿を停止するよう主要な広告主へ公開書簡を送った。そうした影響で複数の企業が広告を取り下げた。「収益が大幅に減った」とマスク氏は11月4日にツイートしている。
11月上旬に有料サービス「ブルー」を刷新し、月額8ドルでアカウントの「認証済みバッジ」を提供するサービスを展開したものの、悪意を持ったバッジ付きのアカウントが製薬会社になりすまし、偽情報を流すという事態が発覚。数日後にはブルーの登録を停止している。
米メディア監視団体メディア・マターズ・フォー・アメリカによると、マスク氏のツイッター買収から一月とたたないうちに、大手広告主100社のうち50社が撤退したという。米紙ニューヨーク・タイムズは、サッカーワールドカップ時期の広告売り上げが期待値の8割にとどまったと報じた。
マスク氏は最大規模の広告主である米アップル最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏に直談判した。11月30日には「我々のポリシーは従来と変わりがない」などと説明する「Twitter 2.0」宣言を公表し、広告主の企業にアピールをした。「一定額以上の広告に大きな特典を付ける交渉をしている」という報道もある。実際、いくつかの広告は戻り始めており、マスク氏の冒頭のツイートにつながる。
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