米国の有力動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」と「Disney+(ディズニープラス)」が立て続けに広告付きプランの提供を発表した。強力なコンテンツ力を持つこれら配信サービスの視聴時間は、テレビ放送やケーブルTVを上回っている。低価格な新プランでさらなる視聴者の獲得に成功すれば、テレビなどを中心とした広告の市場が激変する可能性がある。

米国の有力動画配信サービスは立て続けに広告付きの低価格プランの提供を発表している(写真=SOPA Images / Getty Images)
米国の有力動画配信サービスは立て続けに広告付きの低価格プランの提供を発表している(写真=SOPA Images / Getty Images)

 米国の大手動画配信サービスが成長と競争のはざまであえいでいる。米ネットフリックスの会員数は1~3月期に20万人減、4~6月期には97万人減と顧客離れに歯止めがかからない。6月末の会員数は世界で2億2067万人となり、米ウォルト・ディズニーの動画配信サービス「ディズニープラス」や傘下の「Hulu(フールー)」「ESPNプラス」も含めた約2億2100万人を下回った。一方、ディズニーは動画配信サービス部門の制作費がかさみ、4~6月期は10億6100万ドルの営業赤字となっている。

 ネットフリックスのスペンサー・アダム・ニューマンCFO(最高財務責任者)は決算会見で、「値上げの後には解約率が若干高まることを常に想定している」と弁明した。実際、同社はこの時期に欧米市場で値上げに踏み切っている。米国においては1月に6度目となる値上げを実施。13年のサービス開始時に約12ドルだったプレミアムプランは約20ドルに上昇している。会員数を減らさずにどこまで値段を上げられるか。あたかもチキンレースのような値上げを試しているようにも見える。

 ネットフリックスが値上げを繰り返す背景には、「世界中から集まる豊富なオリジナル動画の提供」というコンテンツに対する対する自信がある。「視聴者を飽きさせない」というサブスクリプション(定額課金)ビジネスの命題を成立させるには、高品質なコンテンツを絶え間なく供給し続ける必要があるのだ。

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