米マイクロソフトがWord(ワード)やExcel(エクセル)をはじめとするビジネスツールに、対話AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」を組み込むと発表した。22年11月に公開となったChatGPTは「お試し」の意味合いが強かった。多くのビジネスパーソンが利用するツールがAI化することで、働き方や生産性の改善という実利に直結した活用法を生み出せるか。

「Microsoft 365」の対話AI対応を発表した米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)
「Microsoft 365」の対話AI対応を発表した米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)

 マイクロソフトは2023年3月16日、ワードやエクセルなどをまとめたビジネスツール「Microsoft 365」に対話AIを取り入れると発表した。米オープンAIが開発したChatGPTを組み込む。現在は一部のユーザーを対象とした試験をしており、価格や提供時期などの詳細は、数カ月後に改めて発表する。

 「この次世代AIが、生産性向上の新しい波を呼び起こすと信じている。我々の思考、計画、行動する方法を根本的に変える」と、オンライン発表会でサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は語った。対話AIは、業務を支援する人という意味で「コパイロット(副操縦士)」と呼ぶ。ワープロの「ワード」、表計算の「エクセル」、プレゼン作成の「PowerPoint(パワーポイント)」のほか、「Outlook(アウトルック)」や「Teams(チームズ)」などで利用可能となる。

Word、Excel、PowerPointなどで対話AIが利用できる
Word、Excel、PowerPointなどで対話AIが利用できる

 例えばワードで顧客への提案書を作成するときには、コパイロットの入力画面を立ち上げ、「会議メモと製品資料を使って提案書のドラフトを作成してください」とテキストを記入する。関連ファイルを選ぶと、その内容を勘案し、製品概要や価格、提案のタイムラインなどの箇条書きが現れる。見た目に変更を加えたいときには、チャット欄で「以前作成した他社への資料と同じように、写真も加えてください」と指令すると、デザインに変更が加わるといった具合だ。

Wordで文書を自動作成しているところ。右側のチャット画面でテキストで命令を出す
Wordで文書を自動作成しているところ。右側のチャット画面でテキストで命令を出す

 パワーポイントでも資料を指定すると、その内容に合わせて自動でスライドを作成できる。プレゼンテーション時に話す内容のメモまでAIが記入してくれる。エクセルでは入力されたデータの中から注目すべきトレンドをテキストとしてAIがまとめる。

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