デジタル技術の見本市「CES 2023」が米国時間1月5日から米ラスベガスで始まった。今回は電気自動車(EV)を中心とするモビリティー、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の他、ポストコロナ時代に向けたヘルステックをテーマに掲げる企業が多い。開幕前日にはソニーがホンダと共同開発する自動運転の試作EVを披露した。

デジタル技術の見本市「CES 2023」が米ラスベガスで米国時間2023年1月5~8日に開催
デジタル技術の見本市「CES 2023」が米ラスベガスで米国時間2023年1月5~8日に開催

 ビジネスや技術の動向を見通す上で見逃せないイベントとして知られるCESの熱気が、米ラスベガスに戻ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2021年は完全オンライン、22年はオンライン併用のハイブリッド開催だった。22年の出展企業数は約2300社と新型コロナウイルス禍前の半分に落ち込んだが、今回は約3200社・団体が参加した。

 会期は米国時間1月5日~8日だが、開幕前日の4日からメーカー各社のプレスカンファレンスが始まった。人気のセッションは開始前に行列ができる盛況ぶり。マスクを着用している来場者は少なく、CESは平常運転に戻りつつあるようだ。ここまで多くの報道陣が来場することを想定していなかったのか、会場に設けられた席は早々と埋まってしまう。

 CESはかつて家電の新商品を並べる見本市だったが、時代の変化に合わせてその姿を変えてきた。ここ10年はスマートフォン中心にモバイル関連の技術を発表する場だった。ただ、数年前からEVをはじめとするクルマの存在感が高まっている。

ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長は、ソニー・ホンダモビリティの新しいEV試作車「AFEELA(アフィーラ)」を紹介した
ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長は、ソニー・ホンダモビリティの新しいEV試作車「AFEELA(アフィーラ)」を紹介した

 時代の変化を象徴する「モバイルからモビリティーへ」というキーワードを打ち出したのは、ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長だった。ソニーは他社が開幕に向けて準備を進める中、展示会場の自社ブースで発表会を催した。記者は開始20分前に到着したが、ステージを臨めるスペースの座席は1席も残っておらず、立ち見を余儀なくされた。

 ソニーは昨年のCESで、同社として2台目となる自動運転EVの試作車を披露した。さらに22年9月にホンダとの共同出資でソニー・ホンダモビリティを立ち上げた。ブース奥のステージに登壇した吉田氏は、同社が手掛ける映画やゲームの取り組みを一通り紹介。その上で「我々はソフトウエア駆動型のモビリティー開発にコミットしてきた」と強調し、新しいEV試作車「AFEELA(アフィーラ)」を公開した。

 ソニー・ホンダモビリティ会長兼最高経営責任者(CEO)の水野泰秀氏は、車内外に搭載する合計45個のカメラとセンサーや、前面のグリル部分に設置したディスプレーに文字や絵柄を表示できる機能など、アフィーラの特徴を説明。「安全性とセキュリティーに重点を置きつつ、移動するための空間をエンターテインメント空間に進化させる」と語った。

 車内で映画、ゲーム、音楽が快適に楽しめるのはもちろん、家庭用ゲームで培ったユーザーインターフェースを応用して操作性も向上させる。当面のマイルストーンとして25年前半に受注を開始し、26年には出荷を目指すという。

 自動運転のデータ処理などを担う車載用コンピューターは米クアルコム製を採用する。クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOはソニーとクルマを開発する理由を「日々の生活でユーザーがどのような体験を求めているかを、ソニーが知っているからだ」と説明した。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1224文字 / 全文2581文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「松元英樹の西海岸Techトレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。