日本は長く、都市部が生み出す富によって地方を支える社会システムを採用してきた。国が徴収した税を地方自治体へと再分配する地方交付税の枠組みは、その代表的な例である。法人数や人口が少ない自治体に、大都市圏から所得を再分配している形になっている。地方の県レベルでは、地方交付税が予算の3~4割程度を占めることが多い。

 だが、都市部と地方の生産性の格差は大きく開く一方だ。国の統計によると、都市部の生産性は、そうでない地域の2倍高いとされており、この差はますます広がっていくだろう。都市部が地方を支えるモデルそのものが非効率なものになっていくのは明らかで、今は当たり前に享受している全国共通のユニバーサルな行政サービスの維持は、そう遠くない将来に難しくなっていく。

 こういう話をすると、「格差はなくすべき」だから、都市から地方へとさらに富の移転を進めるべきだという議論になりがちだ。

 だが、それは間違っている。

 なぜかといえば、富の移転が生産性の格差是正にはつながらないからである。今こそ発想の転換が必要だ。「都市と地方の格差がある」を言い換えれば「都市と地方にギャップがある」ということであり、そのギャップはチャンスなのだ。地方は生産性が低いわけで、その低さだけに着目して論評しても何も変わらない。むしろ、生産性が低いということは伸び代があることの裏返しと考えるべきだろう。

生産性の格差をいかに埋めるか

 三大都市圏を中心とする大都市圏と地方の間にある生産性の格差を埋める取り組みに積極的な自治体は増えつつある。広島県はオフィスの改装費用やオフィス機器の購入など会社移転に伴う初期費用を最大で1億円助成するなど、スタートアップ企業の誘致を本格化している。

 大分県は、将来の宇宙産業の集積を見据えて宇宙港の候補地として名乗りを上げた。加賀市(石川県)の市長を務める宮元陸氏のように、スタートアップ企業に自らコンタクトして実証実験などの共同事業を打診する首長もいる。新しいチャレンジに取り組みやすい自治体と認知してもらうことで、ビジネスパーソンの交流人口を増やしていこうという意図がある。

 連載の第2回「子ども食堂DX、官民共創で“お役所仕事”をクリエーティブに」で紹介したワイヤレスゲートの子ども食堂DX(デジタルトランスフォーメーション)や、ウェルモ(東京・港)のケアプラン作成支援AI(人工知能)の取り組みは、公共サービスの手が回らず、どうしても生産性が低くなってしまう部分を民間のビジネスチャンスに転換した例である。

 民間企業によるチャレンジは、公共サービスの生産性向上という形で自治体にとってのリターンとなる。もっとも、言うはやすく、行うは難し。「では、どうしたらいいんだ?」という疑問に対して、まだ答えはないものの、何とか模索しようとする動きが国の取り組みに見えるので紹介しよう。

総務省と経済産業省による“限界宣言”

 総務省と経済産業省は、「自治体のフルセット主義」の終焉(しゅうえん)をそれぞれ唱えている。フルセット主義とは、地方行政があらゆる公共サービスを自前で担うことを指す。これがもう限界を迎えているというのだ。自治体行政の現場にいる人たちは「そんなことは分かっている」と思うかもしれないが、実際に口に出すのはなかなか難しかった。そんなことを口にしようものなら、議会や市民などから「税金で働かせてもらっていながら、公共サービスを維持できないとは何事か」と突っ込まれる恐れがあるからだ。しかし、ここにきて国が「フルセット主義の終焉」ということを言い始めた。いわば、国による“限界宣言”である。このインパクトは大きい。まず、総務省から見てみよう。

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