行政と企業の関係が大きく変わろうとしている。従来の常識や、これまでのやり方が通用しなくなりつつあるが、それはじわりと変化をしているため、なかなか気付きにくい。今までと同じようにやっていても、現段階では何とかなってしまうからだ。その先には、いわゆる「ゆでガエル現象」が待ち構えている。

 ここからは現在の行政と企業を取り巻く社会環境の変化と、そこから予測される未来を展望する。世の中は不思議なもので、行政の置かれている状況の変化と足並みをそろえるように、企業や経済の環境や考え方も大きく変わろうとしている。行政と企業のそれぞれで起きている変化を見ながら、これまで交わることが難しかった行政と企業による共創とはどのようなものなのか、行政と企業にはそれぞれ、どのような準備やマインドチェンジが求められているのかについて考えてみよう。

将来が不透明なVUCA時代

 「VUCA」という言葉をご存じだろうか。昨今、経営を語るときのキーワードとして取り上げられる言葉で、「変動性(Volatility)」「不確実性(Uncertainty)」「複雑性(Complexity)」「曖昧性(Ambiguity)」の頭文字を取った造語だ。将来の見通しが不透明で変化が激しく、従来の常識やこれまでのやり方が通用しない社会の状況を表現するときに使われる。ビジネスの世界ではVUCAの時代であることを意識した経営の重要性が増しており、予測不可能であることを前提にした社会の変革(トランスフォーメーション)に対応できないと、あっという間に時代から取り残されてしまうといわれている。

 想像していないことが起きる。これがVUCAの時代の特徴である。1980~90年代に世界でこの世の春を謳歌した日本の大手エレクトロニクスメーカーは2010年代に入って軒並み衰退した。勢いのあった時代には誰も想像できなかった出来事で、デジタル化やインターネットの普及がもたらした産業の構造転換に国内エレクトロニクス業界が対応できなかったことが背景にあると言えるだろう。

 最近では、長らく世界の中心にいる日本の自動車メーカーの将来を危ぶむ声が出ている。

 背景にあるのは、ガソリン車からEV(電気自動車)への移行という構造転換である。単にクルマを動かす動力源が変わるだけではなく、自動運転技術の進化と相まって移動という手段の提供からクルマを通じた体験の提供という「モノからコトへ」の価値変容が起きつつある。EVで注目を集める米テスラの時価総額はトヨタ自動車の約4倍にも達しており、創業者が保有する株式の時価総額だけでもトヨタを超えているという。

 世界最大の市場である中国では、EV開発の新しい企業が続々と登場している。IT業界をはじめとする異業種によるEVや自動運転のビジネス参入への関心も高い。米アップルがEVに参入するとも報道されており、ソニーはEV開発の新会社設立を明らかにした。米グーグルは自動運転の研究開発を強力に推進している。

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