
前回は、水と油のようだった企業と自治体の関係性の変化について書いた。
もちろん、受発注の上下関係を超えて、対等なパートナーシップの共創型で企業と自治体が公共サービスを開発することは簡単ではない。だが、汎用化の視点を持ちながら行政と一緒に社会課題を解決するプロジェクトを進めたことで、事業の広がり感をつくり出した例は増えつつある。
AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用して福祉課題に取り組むケアテックのスタートアップ企業ウェルモ(東京・港)はその代表格だ。同社は、介護事業者向けの情報サイト「ミルモネット」の運営などを手がけており、2021年11月にシリーズCの資金調達として、DGベンチャーズやアフラックベンチャーズなど12社を引き受け手とする20.4億円の第三者割当増資を発表している。累計資金調達額は約41.2億円に達した。
ウェルモの快進撃のきっかけは、福岡市の協力を得て18年に行ったAIによるケアプラン(介護計画)の作成支援システムの実証実験である。介護保険を使ったサービスを受けたい場合に、利用する介護サービスの計画を立てる。これがケアプランで、一人ひとりの利用者に合わせた介護サービスの組み合わせを考えるため、ケアマネジャーと一緒にプランを練り上げる作業には約20時間かかっていた。
ウェルモはIT企業として、介護施設に関わる必要な情報さえ自治体が提供してくれれば、AIでケアプランの策定を支援できると考え、当時本社を構えていた福岡市に相談に行った。その際に担当した市の職員は福祉畑でないにもかかわらず、ウェルモの考えに共感し、庁内に説明して環境を整えたという。
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