発想の転換で景色は変わる

 こうした状況は発想の転換一つで景色ががらりと変わる。一つの自治体に対する個別解アプローチではなく、自治体と企業の対等なディスカッションの中で社会課題を解決する汎用解を目指していくという発想だ。これによって、企業サイドは同じ悩みを抱えた複数の自治体に横展開しやすくなる。利用する自治体が増えることを見込めれば、成果物の価格を下げることができ、自治体サイドは利用しやすくなる。どこかの自治体でいい事例が生まれることで自治体の横並び意識がプラスに作用し、「自分たちも使ってみよう」という動きにつながるはずだ。

 この発想に立つと、企業にとって最初の取り組みは大規模自治体である必要はない。規模が小さめの自治体の方がむしろ進めやすいだろう。自治体の現場の課題を吸い上げながら、実際の運用の中で横展開を見据えて開発を進行するプロセスを踏めるからだ。人口規模の小さな自治体は小回りが利く上に、社会課題を解決できたときのインパクトも見えやすい。これは小さな自治体だからこそのメリットだ。そして、汎用解としての成果物を横展開できれば、小さな自治体を束ねて大きな規模感に広げていける可能性がある。

 では、前回(「日本の市町村の8割超は人口10万人未満の現実」)記した基礎自治体の8割を占める10万人未満の市町村は、どのようなイメージの組織なのだろうか。

 例えば、北海道の玄関口である新千歳空港のある千歳市は人口10万人弱の自治体に当たる。2021年度の同市の一般会計予算は498.1億円。人口5万人規模だと諏訪湖のある諏訪市(長野県)がある。同年度の一般会計予算は196.8億円。人口1万人規模だと温泉で有名な箱根町(神奈川県)で、一般会計予算は95.5億円だ。単純には比較できないが、仮に一般会計予算を企業の売上高に見立てると、ビジネス機会となる“お役所仕事”が眠る上場企業レベルの規模感の大きな組織が全国に分散しているとも考えられる。

 しかも、ユーザーとしての住民の属性もはっきりと見えている点で、企業以上にそのポテンシャルは大きい。今まで、企業は自治体から「予算をもらって事業をしよう」と考えていたから自治体が持つ可能性に気づきにくかったのだ。

 水と油のように分離していた企業と自治体をどう融合させて、共創で社会課題を解決していくか。次回は、汎用化の視点を持って行政と一緒に社会課題を解決するプロジェクトを進めたことで、事業の広がり感をつくり出した事例から、そのヒントを探っていく。

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