
地方活性化の取り組みがなかなか軌道に乗らない理由は、あえて極端に言えば、企業と自治体はこれまで水と油の関係だったからだ。企業は利益を追い求めるために数を重視するのに対し、住民福祉の視点から非効率なことにも取り組むのが自治体である。
この水と油の関係が大きく変わろうとしている。社会課題の解決を強く求められるようになった企業を取り巻く環境変化はすでに述べた通りだ。一方、自治体は厳しい財政と多様化する社会ニーズによって、これまでの自前主義が成り立たないという状況に直面している。行政が担ってきた公共サービスを民間に委ねていく以外に解決の方法はないというわけだ。こうした環境変化は決してネガティブなものではない。むしろ、日本社会が大きく転換していくためのチャンスが到来していると考えた方がいいだろう。
水と油とはいえ、自治体と企業の付き合いはこれまでにもあった。ただし、それは自治体が仕事を発注し、企業がそれを受注するという一方向の受発注の関係だった。いわゆる入札や公募プロポーザルがそれだ。この受発注の関係では、日本が抱えている課題を解くのは難しい。パートナーになる企業と自治体が対等な関係を構築しにくいからである。しかも、企業としては、どうしても特定の自治体の個別解にアプローチする形にならざるを得ない。
個別解へのアプローチを続けている限り、自治体サイドにも、企業サイドにもいつか限界がやってくる。まず、先に説明した人材難によって、仕事を発注する自治体サイドが「良い問い」をつくれなくなる。自治体が仕事内容を公開して企業のアイデアを募る公募プロポーザルは、自治体が持つ発注の仕組みの中ではイノベーティブな仕組みである。
だが、自治体サイドが自分たちの抱える課題の本質を捉え、かつ適切に言語化できなければ、企業に対して「何を手伝ってほしいか」の的確なメッセージを発信することはできない。加えて、自治体の財政難が追い打ちをかける。成果物への適切な対価を用意できなくなっていく可能性がある。企業から見ても、自治体ごとの個別解アプローチはビジネスとしては大きくしにくい。「成果物を納品して終わり」では、サステナブルなビジネスにすることが難しい。
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