
社会課題の解決を民間企業に支えてもらうといっても、自治体はどうしたらいいのだろうか。特定の会社だけを優遇して何かを依頼するのは公平性の観点から難しいし、ビジョンを共有してくれる企業がどこにいるのかも分からない。そもそも自分たちも、組織として明確なビジョンがあるかがあやふやだ。仮にあったとしても企業とビジョンを共有する仕組みを有していない。
企業だって、利益度外視というわけにはいかない。パーパス経営が大事だといっても、自治体が実施し切れない公共サービスや業務を代替するだけでは、企業目線でいえば、ビジネスとして計算しにくい。小さな自治体では、一つの自治体当たりの取引額はそれほど見込めない。しかも、どの自治体が、どのタイミングで、どういう社会課題の解決を求めてくるか、分からない。となると、自社のソリューションに合致する募集を待つしかなく、非常に効率が悪い。
世の中の大きな流れでいえば、自治体と企業の利害は一致している。社会課題の多様化が進む一方で、自治体は単独ではそのニーズを満たすことができず、頭を抱えている。企業は従来の株主資本主義から脱却し、事業と公益の両立を目指すことを投資家や社会から求められている。両者が協力することでできることはたくさんあるだろう。問題は企業と自治体がいい形で出会う方法がないことだ。
その大きな理由は、日本にある1718の基礎自治体の多くは規模が小さく、分散していることにある。地方の小さな一つの自治体に特化した事業では、企業としてサステナブルな収益化が難しい。
人口分布から見る日本の姿
ここで日本を構成する自治体と人口分布の姿をおさらいしてみよう。2021年12月時点の都道府県の人口トップは東京都の1399万人で、その後、神奈川県の923万人、大阪府の880万人、愛知県の751万人、埼玉県の733万人、千葉県627万人と続く。ここに京都府、奈良県、兵庫県などを加えると、東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏に日本の総人口の半数以上が集中している。
東京では、渋谷や新宿、池袋、丸の内など、どこのビジネス街や繁華街を歩いても街は活気があって、高齢化などどこの世界の話だろうと思っている人も少なくない。人はどうしても自分が見ている景色から社会を捉えがちだ。
大都市圏、なかんずく東京を中心とする東京圏で生活していると行政を意識する機会は少ない。ニュースで目にする自治体があるとすれば、それは東京都であったり、横浜市であったり、人口が100万人を超えるようなところのことが多い。東京都や横浜市が日本の平均ではないということは何となく分かりつつも、実際のところ、多くの人は日本の本当の姿を実は正しく把握していないのではないだろうか。
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