前回、民間企業を活用して、税金を投入せずに子ども食堂のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めた大阪府枚方市の事例を紹介した。

 枚方市の人口は約40万人。大阪府で5番目に人口が多い中核市の1つで、全国の市の中でも規模は大きいほうだ。とはいえ、たった1つの自治体で具現化する子ども食堂DXが、なぜより大きなビジネスにつながるのか。それは、このプロジェクトが人口減少・少子化・高齢化に起因する日本の様々な社会課題と、その解決のヒントとなる要素を多く含んでいるからだ。

 子ども食堂へのニーズを見てみよう。枚方市のプロジェクトにも参画しているNPO法人のむすびえが2022年2月に公表した全国の子ども食堂に関する調査(確定値)によれば、国内の子ども食堂は同年に前年比21.2%増の6014カ所となった。新型コロナウイルス禍であっても1年間に1000カ所を超える過去3番目の増加数という結果は社会的に大きな関心を呼び、全国ニュースでも取り上げられた。16年の調査では319カ所で、5年間で実に19倍に増えた計算である。

 子ども食堂の急増は、社会の要請が確実に広がっていることを示している。多くの子ども食堂は草の根の取り組みだ。小規模の予算と運営者の熱意、寄付者の厚意によって手作りで運営される子ども食堂が日本社会にどんどんと増えている。大きく膨らむニーズからは、子ども食堂の基本的性格が貧困対策を超えて広がっている様子も見えてくる。

 むすびえによる調査では、子どもたちを中心に様々な年代の人々が食事を共にする「多世代交流」の場、地域のにぎわいを取り戻す「地域づくり・まちづくり」の場として地域に根付いていることが明らかになった。つまり、子どもからお年寄りまで地域の人々が集い、食事をきっかけにコミュニケーションを交わす場である。子どもだけではなく、高齢者を中心に大人にとっても重要な存在になっているわけだ。

新規事業で横展開を目指す

 社会のニーズと草の根の熱意が拡大しているにもかかわらず、小学校の全学区に子ども食堂を設置する予算の確保は難しい。これが全国の自治体財政の実態である。

 例えば、枚方市の一般会計の予算規模は21年度に1414億円。それくらい大きな都市でも、子ども食堂の数を増やし、その取り組みをサポートする予算の確保は容易ではない。後述するが、国内の自治体は枚方市よりも小さな規模がほとんどである。それでも、運営者の熱意で手作りの子ども食堂が増加している。つまり、枚方市で生じている課題やニーズは、全国の自治体にとって特段不思議な光景ではないということだ。

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