ここに民間企業と自治体が手を組んで様々な社会課題を解決する取り組みを具現化する大きなヒントがある。一つひとつの自治体における取り組みは小規模でも、全国には1718の基礎自治体(市町村のこと、東京都の23区を除く)と47の都道府県が存在する。

 1カ所の自治体で実績を積んで横展開できれば、企業としてはビジネスの計算が立つ規模感にできる。ワイヤレスゲートは専用のウェブサイトを用意し、ITシステムで食材寄付者と子ども食堂を結びつける手法で枚方市の子ども食堂DXを実現した。その実績を足掛かりに、同じように困っている他の自治体への横展開という新規事業の可能性を見ているわけだ。現場の声を聞きながら実情に即した開発を進めることができるのであれば、新規事業を立ち上げる際の開発費用の投資は民間企業にとって当たり前のことだろう。

 ただし、ここで企業に初期の投資をためらわせるハードルがある。公共サービスにおける従来の入札や公募プロポーザルは自治体の募集に対して企業が応募する仕組みのため、成果物を他の自治体にそのまま横展開はしにくいのが実情だ。案件として採用されて納入した成果物は募集した自治体に特化したものになることが多く、それを他の自治体でも活用できるように汎用化する作業は手間がかかるからである。この状況は、行政による社会課題の解決に民間企業がビジネスとして参入しにくいと考える大きな要因の1つになっている。

意外な方法で財源を生み出す

 前回の記事で示したように、枚方市の子ども食堂DXのスタートポイントは、ワイヤレスゲートが募集したテーマに対する枚方市の応募である。この通常とは逆の流れが民間企業と自治体の目線を合わせて本当に必要なシステムや課題を洗い出すディスカッションにつながっている。

 例えば、寄付金付きのこども食堂応援Wi-Fiを考えついたのは、「子ども食堂の運営費の捻出に頭を悩ませている」という自治体の現場の課題を聞いたからだ。子ども食堂を効率的に運営するために斬新な新技術を応用したITシステムを開発できたとしても、そのオペレーション費用を捻出できないのなら絵に描いた餅となり、使われないシステムになってしまう。

 そうであれば、その財源についても何か手立てを考えておこうと編み出したのが「通信費+500円の寄付=サービス利用料」というこども食堂応援Wi-Fiだ。こうしたサービスは企業が自治体とフラットな関係で出合わなければ思いつかないだろう。自治体にとってもまさか、そんな方法で財源をつくり出すことができるとは想像も及ばなかったに違いない。

 これこそが、新たな官民共創の1つのモデルになると信じている。実績を上げて浸透していくには時間がかかるだろう。ただ、これからの日本を考えると、そんな悠長に構えてはいられない。次回は、曲がり角にある行政の今について論じていく。

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