これは企業も同じだ。今は、将来の見通しが不透明で変化が激しく、従来の常識やこれまでのやり方が通用しないVUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代といわれている。予測不可能であることを前提に社会に対応しなければならない。企業は、市場メカニズムによって変化を遂げようとしている。実際、渋沢栄一の『論語と算盤(そろばん)』よろしく、世界は株主至上主義からステークホルダー至上主義へと舵(かじ)を切りつつある。いわゆる「三方よし」の経営だ。今はその端境期にあるため分かりにくいが、もう少しすれば、誰の目にもはっきりと分かる形で企業の在り方は変わるだろう。

 連載タイトルや社名に冠したXにはトランスフォーメーション以外にも意味がある。エクスペリエンス(体験)のXでもあり、社会課題と様々な事業分野との掛け算の意味も込めている。

 解決したい社会課題が目の前に山積していても、解決手段がどこにあるのか分からない行政と、解決手段は持っていても、どのような社会課題があるか分からない企業。両者はまさにコインの表と裏の関係といっていい。悩んでいるポイントは同じだ。問題は企業と行政の出合い方である。

 理屈だけなら、多くの人が理解できる。問題は、どのように行動に移すかである。VUCA時代は正解を求め過ぎないことが要諦で、小さなトライ&エラーを繰り返すことで、経験値を増やしていくのが何より重要だ。新しいやり方を試すのは勇気がいることもあるだろう。それは企業も行政も同じだ。今、確実に言えることは「従来の考え方ややり方をそのまま踏襲する先に未来はない」ということだ。だったら、新しいことに挑戦する以外に道はない。次回以降、その取り組みについて触れていきたい。

(この記事は、書籍『ソーシャルX 企業と自治体でつくる「楽しい仕事」』の一部を再構成したものです)

この記事はシリーズ「伊藤大貴の「ソーシャルX」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。