
ソーシャルX(エックス)――。今回新たに始める連載タイトルであり、筆者が共同で立ち上げたスタートアップの社名(SOCIALX)でもある。
DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)という言葉が企業社会でも一般的に使われるようになった。「トランスフォーメーション=変容・変革」が求められるのは、デジタルや環境だけではない。社会全体に変革を、という思いが私の中にある。
社会課題解決を新規事業のテーマにしたい企業向けに、自治体が持つデータや人材などとマッチングするサービスを提供している。官民共創で社会課題を解決し、新たな価値を生むのが狙いだ。
なぜこのようなスタートアップを立ち上げたのか。背景には、私の少し変わったキャリアがある。大学院で理工学研究科を修了した私は「日経エレクトロニクス」の記者として社会人の第一歩を踏み出した。その後、ひょんなことから、縁もゆかりもなかった政治の世界に飛び込む。横浜市議会議員になったのは2007年、29歳のときだった。その後、3期10年にわたって市議会議員を務め、17年に横浜市長選挙へ立候補したのをきっかけに議員を引退し、いくつかの起業を経て、今日に至っている。
メディアの一員として社会の課題を追求し、官の立場でよりよい社会の実現に向けて汗を流し、官民それぞれに足りない部分を補うつなぎ役になるべく起業した。3つの異なる視点で社会を見つめ、課題解消に向けたアクションを起こしてきた私だからこそ、見える景色がある。本連載では、少しずつではあるが、それを皆さんと共有していきたい。
岸田政権が官民共創を掲げ、財界も呼応
岸田政権が「新しい資本主義」を示した当初は、このキーワードがビジネスに直結するのかどうか、世間は懐疑的だった。ところがここへ来て、「新たな官民連携の形」として、社会課題を官民共創で解決し、それをビジネスとして成長させていく明確な方針が示され、経団連や経済同友会など、財界もこれに呼応し始めている。
官民共創という言葉は多くの人にとって、まだ聞き慣れない言葉かもしれない。言い換えれば、民間企業と行政によるオープンイノベーションだ。民間企業と行政で社会課題を共有しながら、新規に事業を開発していく。そんな習慣はこれまであまりなかったため、「できっこない」と感じる人が多いかもしれない。だが、企業同士のオープンイノベーションも、少し前までは「できっこない」といわれていたことを思えば、官民共創を軸にしたビジネスを創出する社会はもう目の前に迫っているといえるだろう。岸田政権になって、産業界もこぞって「社会課題解決」「官民共創」を口にし始めているのが何よりの証拠だ。
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