「ユニバーサルな行政サービスの終焉」では、大きな人口を背景にした大都市における税収が地方を支える現在の社会システムが崩れ、全国共通のユニバーサルな行政サービスの維持は、そう遠くない将来に難しくなっていくということを述べた。今後は地域の核となる都市をハブに、周辺都市の連携が本格化する。地方自治体のそれぞれが、すべての公共サービスを自前で担う時代は終わり、都市が互いの強みを打ち出しながらサービスや機能をシェアする時代が始まる。「垂直統合型から水平分業型へ」という都市のオープン化時代の到来と言い換えてもいい。

 今後も税収が右上がりで増えていくことが予想される社会であれば、従来と同じように各自治体が行政サービスをフルセットで提供する垂直統合型の時代を続けることもできるかもしれない。だが、担税力の高い生産年齢人口(15~64歳)が減り、超高齢社会の進行によって社会保障費が増えるというダブルパンチが自治体を襲う。地方自治体によるフルセットの公共サービスの提供には終止符を打たざるを得ない。1960~70年代の高度経済成長期に整備した水道や道路、橋梁など様々な社会インフラは建設・敷設から50年以上が経過し、老朽化が進んでいる。その改修作業にかかる費用も自治体に重くのしかかる。

 「ユニバーサルな行政サービスの終焉」で紹介した総務省や経済産業省による“限界宣言”は、かつてはあり得ないことだった。行政機関が「行政の仕組みに限界が来ている」と自らを否定しているのだ。そのあり得ないことが、なぜ今起きているのか。それは、行政が置かれている状況が本当に待ったなしだからに他ならない。

 世界的に見ても、都市部への人口集中は大きなトレンドであり、日本もまた、そのトレンドの中にある。少子化と高齢化によって、人口をどんどんと失っていく自治体が今のまますべての公共サービスを今までと同じやり方で維持するのは現実的ではない。少子化によって担税力の高い生産年齢人口が減っていくため、税収は減少トレンドに入っているからだ。

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