新しい大学入試、評価されるポイントは?
前回、大学入試改革の影響によって、近年、「アピール基準の入試(総合型選抜・公募推薦。以下、アピール入試)」での募集枠が急増しているという話をしました。
これらの入試は、学力以外の側面も含めて受験生を見るという前提と、その試験内容に傾向はあるものの、具体的な試験内容や基準は大学によってまちまちです。ただし、複数の評価項目の総合点で「大学が求めている学生像であるか、否か」が問われる試験ということは間違いありません。
そこで本稿では、その試験の傾向と、合格するために求められる能力について考えます。
なお、公募推薦は学校長の推薦が必要で、総合型選抜は不要という差はありますが、実際の試験内容がほとんど同じという大学は少なくありません(一般的には、公募推薦が高校ごとに応募人数の上限が決まっているなど条件が厳しいのに対し、総合型選抜のほうが応募条件は緩く、その分提出書類などが厳しいという傾向にはあります)。
また、同一大学の総合型選抜と公募推薦を両方とも受験できる大学も少なくありません。実際に受験する場合には、各大学の募集要項をしっかり確認して臨みましょう。
受験生こそ考えるべき「大学の存在意義」
そもそも「大学」とは、何のためにあるのでしょうか? 実は、上位大学のアピール入試を攻略するための近道は、この「大学の存在意義」にあります。
というのも、「相手が何のために存在していて、どういった人材を求めているのか」によって、求められるアピールはまったく変わってくるからです。
このことは、恋愛を例に考えてみれば分かりやすいと思います。好きな相手にアプローチするとなったら、相手が気にしていることや大事にしているポイントをできる限り調べて、応えようとするのではないでしょうか。相手を喜ばせよう、という気持ちからスタートすることが多いはずです。
アピール入試も同様です。合わないところ、相手のこだわりとは違う点があったとしても、まずは合いそうな点、相手を喜ばせる点をアピールする。自分の好みやこだわりばかりを押しつけても、うまくはいきません。
アピール入試のスタートは、このように「上位大学がアピール入試で何を見ているのか」「どんな能力を測ろうとしているのか」を考えることです。そのうえで、「どう取り組んでいくか」「どう表現するか」と考えなければ、そもそも話を聞いてもらえません。
結論からいえば、大学は「学問や研究をするところ」です。学問や研究とは、まだ分かっていないこと(法則、因果関係、技術、解決策など)を調査、実験などによって明らかにすることをいいます。
その新しく分かったことを論文によって世の中に広く知らしめることによって、科学技術の進歩や社会の発展、社会問題の解決に貢献するのが大学の存在意義です。ここに、高校までの学びと大学以降の学びの大きな違いがあります。
高校までの学びは「すでに分かっていること」を扱うのに対して、大学は「まだ分かっていないこと」を扱います。また、高校までは「誰かが明らかにした知識が与えられる場(受動的)」ですが、大学は「まだ誰も明らかにしていないことを解き明かす場(能動的)」であるともいえます。
目標設定という面においても、高校までは「求められる習熟度」や「偏差値」という形で与えられるものがありますが、大学の学びでは自分で決めることが求められます。そう、大学の学びは、「まだ分かっていないこと」を「能動的に、自分で目標を決めて、解き明かしていく」ということなのです。
Powered by リゾーム?