後発のネット通販が成功した4つの要因
2つ目の主力事業であるネット通販事業「ショッピー」をシーが立ち上げたのは、ゲーム事業が軌道に乗った後の2015年6月から7月にかけてだ。インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポールの東南アジア主要6カ国と台湾でほぼ同時にショッピーを開始したが、当時、東南アジアのネット通販業界は、後に中国のアリババ集団傘下に入るラザダなどの有力企業が大きなシェアを持っていた。
新興のネットゲーム企業だったシーが成功すると考えていた人は少なかったが、各国で毎年、着実にシェアを拡大。マレーシアの情報収集サイト、アイプライスによると、参入から5年後の2020年7~9月期には月間の平均訪問者数が東南アジア主要6カ国すべてで首位になった。2019年以降に進出した中南米地域なども含めた注文受け付けの総件数は、2021年10~12月期には20億件に達した。前年同期比で90%増のペースで伸びており、事業開始から6年がたった時点でも高成長を維持している。
後発だったショッピーが成功した主な要因は4つある。まず、スマホの利用者が使いやすいネット通販サイトをいち早く構築したことだ。創業者のフォレスト・リーは、「ショッピーを始めた2015年当時は東南アジアでスマホの浸透率が上昇し始めた頃だった。我々は当時から携帯電話経由の注文がいずれ主流になると考え、スマホ向けのサイトデザインに注力した」と語る。当初はパソコン向けのサイトを持っていなかったほどだった。
東南アジアのネット通販に革新を持ち込んだのは、サイトのデザインだけではない。2つ目の要因として、当時主流だった自社で在庫を抱えて商品を販売する方式ではなく、各国の中小事業者がショッピーに出店するマーケットプレイスのモデルを採用したことがある。当時は目新しい形式だった。
3つ目の要因として、集中する分野を定めるカテゴリーマネジメントに長けていることがある。当初注力したのはファッションや美容・健康関連商品だった。これらの分野は携帯電話や電気製品などに比べ単価が低く、流通総額(GMV)が稼げないことから、当時は多くの総合ネット通販業者が軽視しがちだった。一方で、単価が低い分、若年層の利用者が集まりやすい利点がある。
最後の4つ目は、ネット通販が東南アジアより先に浸透した中国の大手のマーケティング手法を学び、取り入れたことだ。中国のアリババ集団などネット通販大手が11月11日の「独身の日」にちなんで実施する大規模セールを模倣しているのはその代表例だ。
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