孫正義から出資を取り付ける

 日本との関係が浅くないトコペディアだが、2014年10月、ウィリアムはソフトバンクグループの総帥、孫正義に東京で直接会い、出資を取り付けた。

 このソフトバンクの出資には伏線があった。2013年にウィリアムは、中国アリババ集団を創業したジャック・マーらと孫に面会し、事業について説明する機会を得た。短時間の面会で彼は、トコぺディアの具体的な事業の説明ではなく、インターネットを使って実現したい夢、インターネットが自分にくれたチャンスについて語った。

 ソフトバンクから出資を受けるメリットは資金面だけではない。ソフトバンクを通じて、ジャック・マーら世界の有力スタートアップ経営者の知己を得た。その後、アリババもトコペディアに出資する。

 ウィリアムは孫に心酔し、新型コロナウイルスの感染拡大で、インドネシアと日本との渡航が難しくなる前までは、頻繁に孫正義を訪ねた。彼は、「孫さん(彼は「さん」付けでこう呼ぶ)は本当のビジョナリーだ」と称揚する。そして、孫の経営哲学も受け継いで、トコペディアは成長に向けて再始動した。

徹底したオープン戦略

 ネット通販というサービスは、他社との差別化が難しい業種でもある。そんな中でトコペディアが急成長できた要因を考えてみたい。

 同社がとった特徴的な戦略は徹底したオープン戦略だ。例えば、決済サービスではクレジットカードや銀行送金、電子マネー、現金着払いなど、豊富なオプションを用意した。インドネシアのような国では、クレジットカードや銀行口座を持っていない人も多く、各種電子マネーや現金での支払いをできるようにして、利用者の裾野を広げた。

 配送も同様だ。少し高めだが、ゴジェックやグラブを活用した即日配送に加えて、宅配業者を使った通常配送、速達など、複数の選択肢を用意した。

 品ぞろえの面では、業者のプラットフォーム利用に対して原則無料とすることで、多くの業者に出品を促した。そうすることで、ありとあらゆる商品がトコペディアのプラットフォーム上に集まり、インドネシアのネット通販の世界で他社に先行した。そして、類似の商品が多く集まれば、そこに競争が生まれ、価格も抑えられる。消費者から見れば、トコペディアで買い物をした方が得だというイメージがついた。

トコペディアは配送で様々な方法をとれるようにした(写真:Toto Santiko Budi/shutterstock.com)
トコペディアは配送で様々な方法をとれるようにした(写真:Toto Santiko Budi/shutterstock.com)
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 消費者の支持を集めて多くの利用者が集まるようになると、今度はトコペディアで独占販売する商品を用意し、利用を伸ばす。例えば、中国製のスマートフォン「OPPO」は一時期、トコペディアでの先行販売や限定販売を行っていた。

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