多過ぎるコンテンツがマーケティングの常識を変えた
新しいデバイス、スクリーン、人の関心を引き寄せて没入させるコンテンツが大量に現れ、ただでさえ情報過多の消費者は、さらに膨大な量の情報に押し潰されそうになっている。消費者は、自分たちが浴びているそれらの情報を処理しきれなくなるだろう。そうすると、チャンネルを変えるか、スクリーンを閉じるか、自費で広告遮断環境を手に入れるかなどの対応をとるようになる。
消費者に接触するだけなら簡単だが、無数の商品がひしめく環境下で彼らの心をつかむことは難しい。それでもマーケターは、それが商品であれ、サービスであれ、ブランドであれ、自分たちのストーリーを伝えなければならない。では、どうやって?
一言で言えば知覚だ。人は、五感を通じて脳にさまざまな情報を絶えず送り込んでいる。脳の異なる部位がこれらを処理し、私たちの周囲に広がる世界の意味を理解する。マーケティングと直接的な関係がある部位と処理のいくつかに絞って見ていこう。
訴えかけなければいけないのは「どっちの脳」か?
一つ目に、従来から原始脳と呼ばれている部位がある。ここは急速に、かつ簡単に機能する。例えば、私たちは虎を見たら、何も考えずすぐ逃げるだろう。これは反射的行動だ。原始脳が危険を察知し、激しい恐怖を感じ、アドレナリンが出て、命がけで走る。
感情(フィーリング)の大部分は原始脳で生まれる。情動(エモーション)が生じるのもこの部位だ。原始脳は「システム1思考」と結びついている。速くて、努力を必要とせず、無意識で直感的な思考が、私たちの行動や意思決定の多くを導いているのだ。
二つ目は認知脳で、「システム2思考」と呼ばれるものと結びついている。認知脳は、情報や状況を慎重に分析し、その結果が人の行動や反応の仕方を決定する。私たちが何かを決めるとき、ほとんどは感情、つまりシステム1思考が後押ししている。認知脳は決定を伝えるかもしれないが、決定そのものは感情によって後押しされる。
仮に消費者が、ある食品のラベルに「たんぱく質 6グラム」という記載を見たら、その情報はシステム2を通じて理性的に処理される。価格表示も同様に、システム2を通じて評価される。しかしここで、システム1は無意識に「言外の意味をくみ取る」仕事をしている。使われている言葉、書体、色、かたち、ビジュアルなどが、より深くて微妙な意味を、異なる経験を持つ私たち一人ひとりに思い起こさせ、あるいは伝え、結果として購買の判断を促すのだ。マーケターは感情や言葉にできない側面を、理性的な側面よりもかなり強く意識すべきだ。
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