「あなたの強みは何?」と聞かれたら、あなたは何と答えますか? もしこの質問に、言葉が詰まってしまうなら、あるいは、10年前と同じ答えをしようとしてしまうなら、今こそ、「強み」についての考え方を変えたほうがいいかもしれません。『「本当の強み」の見つけ方「人生が変わった」という声続出の「自己価値発見トレーニング」』の著者・福井崇人氏と、ファンを大切にしファンをベースにして中長期的に売り上げや事業価値を高める「ファンベース」を提唱する佐藤尚之氏が、不安の時代に自分とポジティブに向き合い、自信を取り戻す方法を語り合います。前編は「あなただけの強みの見つけ方」について。

悩みの底で2人がそれぞれ出合った「1冊の本」

佐藤尚之氏(以下、佐藤):福井さんが新刊『「本当の強み」の見つけ方』で、人生を変えた1冊として紹介していた『絵とは何か』を今日、持ってきました。著者の坂崎乙郎先生の授業を大学で取っていて、学生時代に買ったものをずっと本棚に入れていたんです。

『絵とは何か』坂崎乙郎著、河出書房新社(写真=尾関祐治、以下同)
『絵とは何か』坂崎乙郎著、河出書房新社(写真=尾関祐治、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

福井崇人氏(以下、福井):佐藤さんもこの本を持っていたとは! しかも、大学時代から40年以上も持ち続けていたんですか! 

 私は、進路に迷っていた時、高校の図書館でこの本に出合いました。ゴッホが絵に込めた強いメッセージを知って心を揺さぶられて、美術大学に行く決心をしたんですよ。

佐藤:もともと美大に進学しようって決めていたわけではなかったんですね。

福井:小さいころから絵を描くのが得意だったものの、進学校に通っていたし周囲に美大に通っている人もほとんどいなかったんです。なかなか大きな決断でしたが、この本に背中を押してもらいました。

佐藤:僕はたまたまちょっと前にこの本を読み返したばかりで。その理由も「人生に迷っていたから」。だから、福井さんが同じような理由で紹介していて本当にびっくりしたんです。

佐藤尚之(さとう・なおゆき)<br>コミュニケーション・ディレクター。株式会社ツナグ代表。株式会社ファンベースカンパニー取締役会長。大阪芸術大学客員教授。1961年生まれ。85年電通入社。コミュニケーション・ディレクター/クリエイティブディレクターとして数々のコミュニケーション開発に従事し、2011年に独立。著書に『ファンベース』(ちくま新書)、『明日の広告』(アスキー新書)、『明日のプランニング』(講談社現代新書)、『ファンベースなひとたち』(日経BP)など。
佐藤尚之(さとう・なおゆき)
コミュニケーション・ディレクター。株式会社ツナグ代表。株式会社ファンベースカンパニー取締役会長。大阪芸術大学客員教授。1961年生まれ。85年電通入社。コミュニケーション・ディレクター/クリエイティブディレクターとして数々のコミュニケーション開発に従事し、2011年に独立。著書に『ファンベース』(ちくま新書)、『明日の広告』(アスキー新書)、『明日のプランニング』(講談社現代新書)、『ファンベースなひとたち』(日経BP)など。
[画像のクリックで拡大表示]

 実は僕、4年前に突然アニサキス(寄生虫)が原因のアナフィラキシーショックを起こして死にかけたんです。それで重度のアニサキスアレルギーになってしまった。それまでは本業以外で食べ歩き本を何冊も出して、グルメサイトも運営して、って食は人生の大きな柱の1つだったのに、その柱を失うことになったんです。このアレルギーって、海の魚介類がほぼすべてダメなんですよね。生でも加熱してもダメな上に、ダシやエキスもダメ。これって和食がほぼNGになったということだし、お総菜や調味料に多用されるアミノ酸系の添加物もダメになってしまったから、スーパーやコンビニで売られている加工食品もほぼ食べられなくなってしまったんですね。

福井:佐藤さんといえば、旅とグルメの本、というイメージですよね。

佐藤:そう、人生の多大な時間をかけてやっていました。でももう外食や旅行も本当に不自由になるし、僕と行くと入れる店が本当に限られるから、友人とも外食や旅に行けなくなった。それでかなり気分が落ち込んでしまって、長く立ち直れなかったんです。で、「立ち直るために何かしないと」と思っていろいろやってみたんだけど、そのうちの1つが「食の代わりにアートを人生の趣味にできないか」だったんですね。そして手始めに美術検定1級を受けるための勉強を始めたんだけど、その際に「そういえばあの本、再読してみよう」と読んだのがこの本だったんです。

福井:そんな大変な目に遭われていたとは。まさに人生が一変されたんですね。

佐藤:かなり食に頼って生きてきたので、まさに一変しましたね。あまりにつらかったので、克服するために「1000日チャレンジ」って呼んでいろんなことにチャレンジしました。ランニングを1000日続けたりもしましたね。美術検定も3年目に無事1級に受かりました。

次ページ 「強み」を失って気づいた「人生の新しい可能性」