「就職」という言葉が示す意識の違い

ピーダーセン:日本とデンマークの差になっている「入り口と出口」という問題の背景には自己肯定感の差があります。実際、日本人の仕事選びは、自己肯定感の低さを加速させてしまう仕組みになっていますよね。

福井:というと?

ピーダーセン:私が大好きな日本文化の1つに漢字があります。漢字をモチーフにアート作品をつくるくらい漢字が好きなのですが、初めて「就職」という漢字を学んだときは衝撃でした。

 就職は「職(仕事)に就く」と書く。字は違いますが、音は「付く」と一緒だったので、企業や組織など大きいものに引っ付いてしまう日本人の姿を表していると思ったんです。

福井:確かに日本人は組織に引っ付いて、染まる人が多い印象があります。

ピーダーセン:だから僕は前から「就職」ではなく、「創職」がいいと発信してきたんです。

福井:仕事を創るということですか?

ピーダーセン:そうです。日本人にありがちな働き方として、石の上にも三年の精神で「とりあえず名前のある会社に入って、組織のために働く」というのがあります。そうではなく、自分が何をやりたいかで、入る会社を決め、取り組む仕事を自分で創造する。つまり、創職は福井さんがおっしゃるパーパスと、本当に同じことを意味しているんです。

 パーパスを持ち、自分で決めた目標に従って生きなければ、嫌でも組織や上司に付き従うしかなくなります。そうではなく、どこで働くにしても、パーパスという自分軸で物事を決めるようにすれば、幸せに働くことができます。

福井:私もパーパスや「やりたい」という気持ちを人生の軸にすることが大切だと思い、本を書きました。でも、私が大学や企業で講義をすると、金銭面などの将来への「不安」が「やりたい」というパーパス起点の原動力より勝ってしまう人が多くいます。それは一人ひとりがパーパスを持ちながら安心して生活できる環境が整っていない社会を映し出しています。

ピーダーセン:確かに、デンマークでは日本で不安視されている教育、医療や老後、雇用に手厚い公的支援があります。そのため、将来に対して不安を持たずに自分の「やりたい」という気持ちを軸に暮らすことができます。そうした社会の支えがパーパス思考には不可欠なのかもしれませんね。

(写真:Shutterstock)
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