消費者にも見透かされる「企業の裏の顔」
福井崇人氏(以下、福井):上場企業の役員の失言が話題になることがあります。
斉藤徹氏(以下、斉藤):企業や大学で、組織を引っ張る立場の人たちの失言が後を絶たないのは嘆かわしいです。
福井:マーケティングの観点で見れば、失言は、企業から消費者に向けた1つのコミュニケーションです。悪い意味ではあるものの、消費者がその企業の存在を認知するきっかけにはなります。同時に、権限のある人の発言は、ある意味その会社の価値観そのものです。そう考えると、その会社組織が健全でないことも世間にアピールしてしまいます。
普段はクリーンな顔を見せている企業の中で、実はとんでもない価値観がまかり通っている。この「ウチとソトのギャップ」に、多くの消費者が反応しているのではないでしょうか。
斉藤:企業が持つ裏表、つまり「思いと行動の不一致」が炎上を引き起こしているということですね。
以前から僕は、コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さんと、「思いと行動の一致」が、消費者に誠実さを示すためにより重要になってくる、と発信してきました。しかし多くの方から「それはきれいごとだ」と言われていたんです。
福井:ここ10年くらいで大きく変わりましたね。実態が伴わないと、とたんに炎上してしまいます。
斉藤:その背景には「ソーシャルシフト」があると僕は考えています。企業の公式な発表、つまり表の顔以外のものが、社員同士、あるいは顧客とのやり取りで見えてしまうようになりました。
でも、これは全くの新しい話ではなく、かつてバラバラな社員が集まって労働組合ができたのと同じ流れの中にあると思っています。社会での一人ひとりの「つながる力」が強くなっている。SNSもその流れだと思います。
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