新発見やイノベーションは既存のアイデアの「組み合わせ」から生まれると言われるが、既存のアイデアをどう模倣し、組み合わせているのか? そこで役に立つのがアナロジー(類推、類比)思考である。トヨタ生産方式も、アメリカのスーパーマーケットの仕組みから「コンセプト」を模倣している。遠い分野のコンセプトを模倣し応用するアナロジー思考は、すべてのビジネスパーソンに役立つ。『ビジネス思考力を鍛える クイズで特訓50問 (日経文庫)』 から一部を抜粋してお届けする。

アナロジーを考える3つのポイント

【問題】検索エンジンとオモチャのビジネス上の共通点は何でしょう?
あらゆる発想は、類推(アナロジー)することから始まる Sergey Nivens/Shutterstock.com
あらゆる発想は、類推(アナロジー)することから始まる Sergey Nivens/Shutterstock.com
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 本問の解説に入る前に、このようなビジネス上のアナロジーを考える上での一般的な考え方のポイントを3つ解説しておきましょう。

(1)唯一の正解があるわけではない。

 当たり前ですが、検索エンジンとオモチャの共通点は1つではありません。例えば、

・顧客が人間である
・地球上でビジネスをしている
・男性も女性も使う
・法令に準拠しなければビジネスを続けることはできない
・インターネットを活用している

と挙げればいくらでも出てきますが、「そんなこと当たり前だろ!」という声が聞こえてきそうです。では、これらの共通点はなぜ挙げてもあまり意味がない(本問題の解答としてはふさわしくない)のでしょうか?

 考えればわかると思いますが、要は先に挙げた項目はいずれも「ほとんど、どのビジネスにも当てはまる」共通点だからです。これは「共通点を抽出する」という抽象化の根源的な性質に結びついています。このことが次のポイントにつながっていきます。

(2)なるべく「その2つに固有」の共通点を探す

 (1)で挙げた「当たり前」事例の逆を考えればこれは自明でしょう。もっとも、似たようなクイズやなぞなぞを出されたときに私たちは無意識のうちにこのような姿勢をとっているはずです。したがって実際には「顧客が人間である」といったバカげた答えを思い浮かべた人はほとんどいないと思います。

(3)ただし、完全に「その2つだけ」の共通点だと応用が利かない

 ここが少し難しいところですが、そもそもアナロジーというのは、応用を利かせるために活用するものなのです。世界中でその2つにしか当てはまらない共通点を探し出しても、他への応用が一切できないので、そのあたりのさじ加減をうまくやるのがアナロジーの秘訣です。

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