「非中央集権化(decentralization)」は、暗号経済の世界で特に多用されている言葉のひとつで、ブロックチェーンの存在理由そのものとまでいわれることも多い。だが、定義が曖昧な単語の筆頭でもある。これまで、何千何万という研究の時間と、膨大な金額に相当するネット上のマシンパワーが、非中央集権化を達成する目的で、そしてそれを保護し改善するために費やされてきた。議論が紛糾してくると、あるプロトコルの推進派は、対立する相手を糾弾するとどめの一撃として、「中央集権的」という言葉を使うのがお決まりの展開だ。
だが、この言葉の本当の意味については、かなりの混乱が頻繁に見受けられる。たとえば、次の図もそうだ。後述するように役に立たないのだが、不本意ながら、あちこちで見かける。
試しにQAサイト「クオーラ」で、「distributed(分散型)とdecentralized(非中央集権型)の違いは何ですか?」という質問に対する二つの答えを見てみよう。一つ目は、実質的に先の図を繰り返しているだけだが、二つ目はまったく違う考えを展開している。「distributed(分散型)とは、トランザクションの処理が1か所だけでは実行されないこと」で、「decentralized(非中央集権型)は一つの実体がすべての処理を管理しないこと」という答えだ。ところが、別のQAサイト「スタック・エクスチェンジ」にあるイーサリアムページでは、よく似た図を使って説明しているものの、なんと「distributed」と「decentralized」の指すものが入れ替わっている。どう考えても、明確な説明が必要だろう。
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