世界的なエネルギー危機は、日本の電力供給にも影響を及ぼす。当たり前に使っていた電力が、なぜ足りなくなるのか。ここに来て一気に進む原発の再稼働は、本当に必要なのか――。自由化、急速な脱炭素化の推進など、日本のエネルギー政策に何が欠けていたのかを解説し、エネルギー確保の戦いに敗れつつある姿を浮き彫りにする。『電力崩壊 戦略なき国家のエネルギー敗戦』(竹内純子著/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成してお届けする。

日本は本当に再エネ後進国なのか

 脱炭素の取り組みや再生可能エネルギー(再エネ)の導入に関して、必ずと言ってよいほど聞かれるのが、「日本出遅れ論」です。「欧米では」「ドイツでは」「それなのに日本では」という“出羽守(でわのかみ)”が頻繁に出没するのですが、そもそも、エネルギー政策は各国の自然条件や人口、化石燃料の有無や産業構造などによって異なるものです。

 脱炭素というゴールは世界共通でも、そこに至る道筋は各国それぞれが考えるべきです。再エネの拡大を目的化すべきではありませんし、再エネはその国の自然条件に大きく左右されますので、単純な導入量競争に陥らない議論が必要です。

 なお、環境省が行った試算で、「わが国には電力供給量の最大2倍の再エネポテンシャルが存在する」と示されたことが話題になりましたが、ポテンシャルというのは罪な言葉で、環境省の資料にも、賦存量(面積等から理論的に算出できるエネルギー資源量)から、法令等による制約や事業採算性などを除き算出したものであり、「導入可能量ではない」ことは明記されています。

 現状では日本は、再エネ発電設備の導入容量で世界6位に位置し、太陽光発電導入容量で見れば、日本の25倍もの広大な国土を持つ中国、米国に次ぐ3位につけています。2012年に再エネ普及促進を目的に、「固定価格買取制度(FIT)」が導入されてから、2019年までの7年間で再エネによる発電電力量(水力除く)は3.4倍にもなりました。導入量から見れば、後進国と揶揄(やゆ)される数字ではないように思います。

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 しかし、発電電力量全体に再エネの発電量が占める比率で言えば見劣りすることも確かです。日本の発電電力量に占める再エネの比率は約22%です。再エネは「エネルギー密度が低い」と表現されるのですが、化石燃料やウラン燃料を使う火力発電、原子力発電と比較して広大な面積を必要とします。そのため、国土面積が広い国の方が導入量を増やすには有利です。また、電力需要が小さければ、再エネが賄う電気の比率は上がりやすくなります。

 EU(欧州連合)の面積は日本の12倍であり、電力需要は日本の3倍ですので、単純に言って再エネの比率の上げやすさは4倍になります。人口が1億2000万人を超え、経済構造が電力を大量に消費する製造業主体である日本の電力需要は大きいため、再エネ比率が上がりにくいのです。こうした各国の事情を見ることなく、電力需要に占める再エネ発電比率で比較して、優劣をつけることは建設的ではないでしょう。

 再エネだけでなく、気候変動対策全般でも日本は後進国と言われます。しかし実は、着実にCO2削減も進んでおり、2014年以降、7年連続で減少しています(ここ数年は新型コロナウイルス禍による経済停滞の影響が大きく、2021年度は増加に転ずる可能性あり)。日本は環境政策やエネルギー政策について、自国を批判的に評価する傾向が強すぎ、メディアや政府関係者の中にもそうした認識が染みついているように思います。

 過剰な自己肯定・正当化は、脱炭素を契機とした社会・産業の構造転換を阻むため、決してすべきではありませんが、逆に、過度に自己否定することも政策のゆがみなどの弊害をもたらすので注意が必要です。

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