3割が「過労死ライン」
内閣人事局が20年秋に国家公務員約5万人の働き方を調べたところ、20代のキャリア官僚の3割が「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をこなしていた。
19年4月施行の改正労働基準法で、民間企業の時間外労働時間は原則として1カ月当たり45時間以内、特別条項が適用されると1カ月100時間未満、複数にわたる月平均は80時間以内と定められた。
国家公務員は労働基準法の適用対象外だが、人事院の規則に従えば1カ月間の時間外労働は原則45時間以内でなければならない。しかし罰則はなく、国会対応などで業務の比重が高い部署には月100時間未満の超過勤務を認める例外規定もある。
首相官邸は、労働の実態に合わせて超過勤務手当を支払うよう各省庁に求めた。すると22年度の一般会計当初予算は、本省分の残業代として総額約403億円を計上。補正分を含めた前年度より17.5%も膨らんだ。本来はもらえていたはずの残業代が、やっと支払われるようになってきた形だが、旧態依然とした労働環境はなかなか改善できない。
「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」。ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする。
経済産業省で10年代に勤務した一般職の女性は、管理職が部下に「辞めろ、死ね」と怒鳴っていた姿が忘れられない。「経産省を出れば何もできないであろう人が幅を利かす」組織に失望した。若手・中堅を中心に退職者が増えてきたのも、こうした組織風土と無関係ではないだろう。
忙しくても報酬は少ない
日本の国家公務員は、諸外国と比べて仕事量が多いのに、もらえる報酬は少ない。大阪大学大学院法学研究科の北村亘教授が経済協力開発機構(OECD)のデータを基に試算したところ、政府全体の歳出を公務員数で割った数値は日本が他の先進民主主義国より圧倒的に高かった。
国の歳出は規模が大きくなればなるほど、運用が煩雑になり、公務員が担う仕事量は多くなる。北村教授が浮き彫りにしたのは、1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。
一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった(上のグラフを参照)。
北村教授は「予算が膨張する一方で職員の定数が減らされ続けているため、国家公務員の業務は量が増えつつ複雑・高度化している」と指摘。「国家公務員の志願者がさらに減れば質の確保が難しくなり、人数以上の仕事を処理できなくなる」と警鐘を鳴らす。
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