際限なきエネルギー獲得の欲求は、人間の脳の本性

「5つのエネルギー革命」のそれぞれについて簡単に説明していただけますか。

古舘:最初のエネルギー革命は「火の獲得」です。私たちの祖先が火の利用を覚えたことによって、脳の肥大化が決定づけられました。人が他の動物と異なる最も大きな特徴は、体格に比較して大きな発達した脳を持っていることです。その特徴を「火の獲得」によって手にすることができたわけです。

 火を操れるようになったことで、人は食べ物を加熱処理する、つまり「料理」が可能になりました。火で調理した食べ物は、生食の場合に比べて、消化・吸収にかかる時間が大幅に短縮され、胃腸の負担が劇的に軽減されます。私たちの祖先は、火を使って料理することで、消化器官が担っている仕事の一部を外製化し、その分のエネルギーを脳へ回したのです。さらに、熱はでんぷんやタンパク質を変質させ、栄養価を飛躍的に高めます。

 私たち人類が誇る優秀な脳は、加熱という形で火の持つエネルギーを間接的に取り込むことにより、生食のままであった場合に比べて、はるかに大きくなっていきました。脳は大量のカロリーを消費する器官であり、本質的に「より賢くなりたい、そのためにより多くのエネルギーを得たい」と望む傾向があります。

 際限のないエネルギー獲得への欲求は人間の脳が持つ本性であり、その脳がエネルギー多消費型の文明をつくり出してきたと言えます。

磯貝友紀(いそがい・ゆき)氏 PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リード・パートナー。2003年より民間企業や政府機関、国際機関にて東欧、アジア、アフリカにおける民間部門開発、日本企業の投資促進を手がける。2011年より現職。著書に『SXの時代』『2030年のSX戦略』(共著、いずれも日経BP)。
磯貝友紀(いそがい・ゆき)氏 PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リード・パートナー。2003年より民間企業や政府機関、国際機関にて東欧、アジア、アフリカにおける民間部門開発、日本企業の投資促進を手がける。2011年より現職。著書に『SXの時代』『2030年のSX戦略』(共著、いずれも日経BP)。
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