この記事は雑誌『日経ビジネス』5月30日号に『安藤徳隆・日清食品社長の決意 祖父と父を追ってたどり着いた境地』として掲載した記事を再編集して日経ビジネス電子版に掲載するものです。

 変革を続ける日清食品ホールディングス(HD)と安藤家の経営者たちの実像に迫る本連載。前回はアドバイザーとして日清食品のプロモーションなどに関わる佐藤可士和氏と、同社社長の安藤徳隆氏に、「完全栄養食」のコンセプトが生まれた経緯を聞いた。

 今回は徳隆氏が見据える会社の未来について語ってもらった。幼少期から「おまえが会社を潰す」と周囲から言われながら育った徳隆氏。経営トップとして無我夢中で働くうちに安藤家のDNA(遺伝子)が目覚めてきたという。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)産声上げた「もう一つの日清食品をつくる」事業
(2)日清食品・安藤家の系譜 しつこく挑む「七転び八起き」の教え
(3)社長の頭の中を見せる 日清食品の「マーケティング会議」に潜入
(4)日清食品、公募で経営人材育成 「ミニ社長」に託すベンチャー魂
(5)「打倒カップヌードル」を掲げたわけ 日清食品・安藤宏基氏の信念
(6)佐藤可士和氏が語る日清食品の異質さ 「創造性が経営の中心に」
(7)創業者の孫の決意「300年続く企業に」 日清食品・安藤徳隆社長(今回)

安藤徳隆(あんどう・のりたか)氏 日清食品社長、日清食品ホールディングス副社長・COO(最高執行責任者)
安藤徳隆(あんどう・のりたか)氏 日清食品社長、日清食品ホールディングス副社長・COO(最高執行責任者)
1977年生まれ。日清食品HDの安藤宏基社長・CEO(最高経営責任者)の長男で、創業者である安藤百福氏の孫。2002年慶応義塾大学大学院理工学研究科修了。04年から百福氏のカバン持ちとして約3年間を過ごす。07年に日清食品に入社し、経営企画部部長に就任。08年の日清食品HD設立に伴い同社取締役・CMO(最高マーケティング責任者)に。専務取締役・CSO(最高戦略責任者)などを経て15年に日清食品社長就任。16年から日清食品HD副社長・COOも務める。(写真:的野 弘路)

 15年に日清食品の社長として経営のかじ取りを任された安藤徳隆氏は2つのスローガンを掲げた。それが「100年ブランドカンパニー」「Beyond Instant Foods」だ。祖父と父から受け継いだ会社をどのように変革しようとしているのだろうか。

 「100年ブランドカンパニー」は既存ビジネスについての目標です。創業者や父をはじめ、過去の諸先輩方が築いてくれたビジネスモデルをどれだけ世界で大きく展開できるかという挑戦ですね。

 もう一つの「Beyond Instant Foods」は、今はない価値の創造を目指す意思表明になります。インスタントラーメン一本足では、いつか会社は衰退していくでしょう。ですから新規事業をつくり、新しい食文化を生み出さなければならない。

 創業者が発明したインスタントラーメンの事業を、父は拡大して世界に広げました。私はそのディメンション(次元)を変えなければならないという思いが強かった。目標としていた時価総額1兆円を20年に達成しましたが、それを2兆円、5兆円と大きくするには、今までの延長線上にあるビジネスでは達成できないと考えたのです。それこそ、ディメンションを完全に変える発想が必要だと。

 でも、そうしたビジョンは「皆で考えよう」と言っても出てくるものではない。日清食品のイズムやパーパスからぶれず、かつ先進性のあるしっかりしたストーリーが必要になる。そこで現代の食生活が抱える問題に立ち返りました。

 創業者がインスタントラーメンを考えたとき、日本では栄養失調が大きな課題になっていました。飽食の時代となった現在は、むしろ肥満が社会問題となっています。飽食が抱える課題を解決すべく、社長就任後から考え続けてたどり着いたのが「完全栄養食」なのです。

 完全栄養食については他の事業者からの期待も高い。楽天グループで完全栄養食の導入を進めたチーフウェルビーイングオフィサーの小林正忠常務執行役員は、「アーリーアダプター(初期採用層)が日清食品の完全栄養食をおいしいと認識すれば、インフルエンサーによるSNS(交流サイト)での拡散などを通じて、販売が急増する臨界点に早い段階で達するのではないか」と話す。

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