変革を続ける日清食品ホールディングス(HD)と安藤家の経営者たちの実像に迫る本連載。前回は「ブランドマネージャー(BM)制」が創業者の「ガレージ魂」を持ち続けるための仕組みとして機能していることを紹介した。
今回は37年にわたって日清食品グループのトップを務めてきた安藤宏基氏のインタビューをお届けする。父である百福氏が生んだ「チキンラーメン」や「カップヌードル」を世界的なブランドに育て上げ、「どん兵衛」や「焼そばU.F.O.」などの新ブランドで先代を乗り越えようとした。宏基氏はどのような信念で日清食品を率いてきたのか。
■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)産声上げた「もう一つの日清食品をつくる」事業
(2)日清食品・安藤家の系譜 しつこく挑む「七転び八起き」の教え
(3)社長の頭の中を見せる 日清食品の「マーケティング会議」に潜入
(4)日清食品、公募で経営人材育成 「ミニ社長」に託すベンチャー魂
(5)「打倒カップヌードル」を掲げたわけ 日清食品・安藤宏基氏の信念(今回)
(6)盟友・佐藤可士和氏が語る 安藤徳隆氏の真の顔
(7)300年続く企業になるための挑戦 安藤徳隆氏が見る未来

日清食品グループの経営トップに就任して37年。どんな会社に育てたいと考えてきたのですか。
安藤宏基日清食品HD社長・CEO(以下、安藤宏基氏):企業の進化や存続は消費者の評価に懸かっています。良いものを提供すれば消費者に買ってもらえる。すると企業が成長する。その循環を繰り返してきました。
環境の変化に適応して「消費者にとってもっと良いものがあるんじゃないか」と進化を続けることが大事です。「カップヌードル」だって進化しなければ淘汰されてしまう。それで「カップヌードルをぶっ潰せ」などと言ったものだから創業者と大げんかになった(笑)。
でも、その前提には「カップヌードルは最強」という思いがあるんです。「どん兵衛」や「焼そばU.F.O.」などの商品を開発した私にしてみれば、生み出した商品を育てるにはカップヌードルをぶっ潰すぐらいの気概が必要だった。
百福氏は納得してくれましたか。
安藤宏基氏:ずいぶん叱られましたね。意味を説明して納得してもらうまでには相当な時間がかかりました。
先ほど「環境に適応して進化する」とお話ししたように、私は企業の「進化論」を基に経営をしてきました。でも、創業者に言わせれば「進化なんていう言葉は深く考えていない証拠だ」と。生み出すときにもっと考えておけば進化する余地はないということですね。「おまえは発想が雑だ」とよく言われたものです。
「チキンラーメン」もカップヌードルも、最初から究極の形をしているんですよ。原点にして完成している。それは精緻な思考の証拠です。スープを液体にしたり、より豪華な商品にしたりと派生こそありますが、最後に残るのは原点なんですよね。
Powered by リゾーム?