第1回で解説したように、日清食品ホールディングス(HD)が「完全栄養食」の事業に乗り出した。即席麺を発明した創業者の安藤百福氏の孫である徳隆氏が挑むのは「即席麺の会社」という殻の破壊だ。

 日清食品を率いる安藤家の3代にわたる経営者たちは、破壊と創造を繰り返しながら日清食品を成長させてきた。なぜ安藤家の経営者は社会を、そして会社を変えようと挑戦を続けるのか。今回は安藤家の「破壊の遺伝子」に迫る。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)産声上げた「もう一つの日清食品をつくる」事業
(2)日清食品・安藤家の系譜 しつこく挑む「七転び八起き」の教え(今回)
(3)社長の思考を社員に見せる 「マーケティング会議」に潜入
(4)公募で経営人材を育てる 「ミニ社長」に託すベンチャー精神
(5)私が「カップヌードルをぶっ潰す」と言ったわけ 安藤宏基氏の信念
(6)盟友・佐藤可士和が語る 安藤徳隆氏の真の顔
(7)300年続く企業になるための挑戦 安藤徳隆氏が見る未来

「チキンラーメン」を開発した研究小屋を模した施設の前で話す安藤百福氏(写真:共同通信、1999年)
「チキンラーメン」を開発した研究小屋を模した施設の前で話す安藤百福氏(写真:共同通信、1999年)

 日清食品HDの2022年3月期の決算は記録ずくめだった。売上収益は前期比12.6%増の5697億円で過去最高。発売50周年を迎えた「カップヌードル」ブランドの売り上げは5期連続で過去最高、45周年の「どん兵衛」は7期連続で過去最高――。

 原材料費の高騰などで利益水準は下がったものの、営業利益は466億円、当期利益は354億円と稼ぐ力は健在。即席麺のシェアは国内では40%超の圧倒的なトップで、世界でも7%強と台湾系の中国食品大手、康師傅に次ぐ2位だ。23年3月期は売上収益5950億円を見込み、初の6000億円達成も視野に入ってきた。

 右肩上がりで売り上げを伸ばし、順調そのものに見える日清食品HDの経営。その歴史は、3代にわたりトップを務める安藤家の「破壊」の歴史でもある。

「食の常識」を破壊した百福氏

 1958年、48歳のときにインスタントラーメンを発明し、後に「人生に遅すぎることはない」という言葉を残した創業者の故・安藤百福氏(1910~2007年)。「七転び八起き」を地でいく人生だった。日清食品の創業に至るまで幾つもの会社を立ち上げ、成功と失敗を繰り返した。戦前・戦中には編み物の商社や航空機エンジンの部品製造会社をおこし、戦後は幻灯機や簡易住宅の製造、そして製塩業まで手を広げた。

 請われて理事長に就任した信用組合が経営破綻に追い込まれてほぼ無一文になり、そこから執念を燃やして「チキンラーメン」を生み出したのは百福氏を象徴するエピソードだ。半年間も保存ができ、お湯を注げば数分で食べられる。しかもおいしい。それまでの食に対する常識を覆す商品だった。

 商品の容器そのものを食器の代わりにすることで世界の食習慣に対応させた「カップヌードル」が誕生したのは1971年。今も日清食品の最重要ブランドであり続ける。百福氏が世界の食の常識を破壊したことに異論を唱える人はいないだろう。

日清食品を経営してきた安藤家(宏基氏の写真:北山 宏一、徳隆氏の写真:的野 弘路)
日清食品を経営してきた安藤家(宏基氏の写真:北山 宏一、徳隆氏の写真:的野 弘路)
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