食品加工技術で「おいしさ」実現

 完全栄養食は食品の三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物のバランスを調整するとともに、ビタミンやミネラルなどの必須栄養素をまんべんなく含むようにした食事だ。

 脂質や糖質などが過剰になりやすい現代の食事の代わりに食べれば、生活習慣病の予防になると期待されている。日清食品は、インスタントラーメンなどの製造で培った食品加工技術によってえぐみや苦みなどを感じさせないように「おいしく」仕上げている。これが他の完全栄養食との差異化のポイントだ。

日清食品が開発した完全栄養食のメニューは麺類やご飯類、パンなど約300種類に達する(写真:的野 弘路)
日清食品が開発した完全栄養食のメニューは麺類やご飯類、パンなど約300種類に達する(写真:的野 弘路)

病院、楽天、トヨタも

 医療法人百賀時の会(大阪府富田林市)は22年3月下旬、通院している患者に日清食品の完全栄養食を試験的に提供した。患者へのアンケート結果では約8割が「おいしい」と答えたという。同会理事長で系列病院の院長を務める木村伸悟医師は「血液透析が必要な患者は生活習慣病が原因のことが多く、食事制限を強いられがち。その人たちも完全栄養食なら食べられる」と話す。

大阪府富田林市の病院で試験提供された完全栄養食のカレーライス(写真:医療法人百賀時の会提供)
大阪府富田林市の病院で試験提供された完全栄養食のカレーライス(写真:医療法人百賀時の会提供)

 企業からも引く手あまただ。楽天は完全栄養食を軸にした新事業を生み出す目的で日清食品と提携した。電子商取引(EC)サイト「楽天市場」での商品販売はもちろん、楽天の保険事業で未病(健康と病気の間の状態)対策に活用する協議を始めた。

 トヨタ自動車も完全栄養食に注目する一社だ。静岡県裾野市で建設を進める「ウーブン・シティ」に完全栄養食を導入し、住民の健康を増進する実証実験を日清食品と共同で進めると4月に発表した。暮らしや働き方、移動を進化させる未来都市で、食や健康を進化させる手段として期待されている。

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