日本での新型コロナウイルスの感染拡大から間もなく3年。ウイルスが弱毒化の傾向を示し、重症化率が大幅に低下してもなお人々はマスクを手放せず、日常生活は2019年以前に戻っていない。欧米は22年に「アフターコロナ」に舵を切っているが、ワクチン接種も含めて日本人の間には同調圧力が働いたままだ。『ワクチンの境界 権力と倫理の力学』(アメージング出版)の著者で神戸大学大学院経営学研究科教授の國部克彦氏は、日本社会が感染防止を重視するがあまり単一の考え方に染まり、自由で多様な議論ができなくなっていると警鐘を鳴らす。

新型コロナウイルスワクチンの接種やマスクなど感染防止対策を巡る日本社会のありようを「全体主義的」と論じています。
國部克彦・神戸大学大学院経営学研究科教授(以下、國部氏):「1つの正しい」考え方をもとに全体をまとめ、その考え方に従う人々と従わない人々との間に境界線を引く。これはワクチン接種を巡る問題で顕著に表れました。政府は「大切な人を守るため」「社会のため」と接種を求めたわけですが、そうした聞こえのいいメッセージの下、立ち止まって考えることが許されなくなったわけです。
ワクチンに予防効果はあると国や製薬会社もうたっていますが、そうでないデータが出てきたり(関連記事:ワクチン2回の陽性率、半数世代で未接種上回る 厚労省再集計で判明)、国内外問わず免疫学者やウイルス学者がワクチンのリスクについて警鐘を鳴らしたりしていましたが、国民的な議論にはなっていません。そうした異論を許さない社会になってしまったように私の目には映ります。
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