コロナ禍を機に30年先を見据えた経営改革

岩出:TOBの危機を無事乗り越えたわけですが、今度は新型コロナウィルス感染拡大の悪影響が待ち受けていました。

後藤:2020年からのコロナ禍は、僕が過去に経験したどの困難よりも業績に与える影響が厳しいです。2020年1月に新規感染者が増加し始め、3月から5月にかけては電車からもホテルからもお客様がいなくなってしまった。コロナ禍の影響を最も受けたその頃、西武鉄道は、コロナ前に比べて乗車率が4割ぐらい。プリンスホテルに至っては、特に都心の稼働率は、コロナ前は80%から90%くらいあったのが、数%に激減しました。

 僕は「この状況は最低でも2年は続く」と直感で思った。だから、まずはコストを徹底的に削減し、損益分岐点を下げるよう指示しました。そして、ピンチを生かして経営改革を断行する。その計画を「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」として、昨年5月に公表しました。

 我々が打ち出したのは、アセットライトという戦略です。具体的には、プリンスホテルから資産を切り離し、うち31事業所をGICというシンガポールの政府系ファンドに売却し、残りをグループ企業の不動産管理会社である西武リアルティソリューションズに移すというものです。

 今年4月から、プリンスホテルは「西武・プリンスホテルズワールドワイド」と商号を変更し、資産を持たずに、ホテルの運営に特化する会社になりました。GICに売却した事業所も含め、運営は引き続き、西武・プリンスホテルズワールドワイドが担います。これからは運営に特化することで、クオリティーを向上させブランド力を高め、現在、国内外で86カ所あるホテルを、今後おおむね10年で250カ所に増やしていきます。

 こうした改革は、今回のコロナ危機がなければ絶対できなかったことです。僕はコロナ禍に背中を押されたと思っています。

岩出:コロナ禍をピンチではなく、機会として捉え、場当たり的な危機対応ではなく、将来の持続的成長を考えて手を打ったわけですね。

後藤:はい。10年先、20年先、30年先を見据えた経営改革です。

「岩出さんの『逆境を楽しむ力』を読んで、参考になるところに付箋を貼っていったら、途中で付箋だらけになってしまって」と後藤社長。「この本の全編にあふれているのは、学生に対する愛情ですよ」
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「岩出さんの『逆境を楽しむ力』を読んで、参考になるところに付箋を貼っていったら、途中で付箋だらけになってしまって」と後藤社長。「この本の全編にあふれているのは、学生に対する愛情ですよ」

日経BOOKプラス 2022年6月10日付の記事を転載]

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 「学生ラグビーの最強集団」である帝京大学ラグビー部。その強さの秘訣は、26年間、監督を務めてきた岩出雅之氏のチームビルディング術とモチベーションマネジメント力にあります。
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