「ホームベース型」への変革で、チームは「自律学習型組織」に進化した(写真提供:帝京大学ラグビー部)
「ホームベース型」への変革で、チームは「自律学習型組織」に進化した(写真提供:帝京大学ラグビー部)
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組織変革に終わりはない

 このように、部内を「タテ」と「ヨコ」でつなげていくことで、担当者が一人で頑張っているのではなく、責任を分担し、全員が当事者意識を持てるようになっていく。また、決めたこと、つまり計画や戦略の実行も、スムーズに進みやすくなります。こうした「タテ」「ヨコ」の組織は、体で言えば毛細血管です。いかに体の細部まで血液を行き渡らせることができるか。血流が不十分であれば、体の隅々まで酸素や栄養素が届けられず、いわゆる「冷え症」の状態になります。冷え症になれば、つらいだけでなく免疫力などが低下し、さらに他の病気につながるおそれもある。組織で言えば、逆境に弱くなる。そのため、組織(会社の組織も体の組織も)というのは、末端まで血のめぐりがいいことがとても大事です。

 「脱・体育会」を目指した「逆三角形型」の組織は、連覇が途切れた一つの要因をつくったかもしれませんが、チャレンジした意義は大いにあると思います。「快適ゾーン」にいることの怖さについて身をもって感じたのは貴重な経験でしたし、それを経験できたからこそ、組織構造を「逆三角形型」から「ホームベース型」に進化させるというアイデアが生まれました。

 組織や文化の改革に終わりはありません。そのため、「ホームベース型」は最終形ではないはずです。

 絶対的な権力を持つリーダーが集団を強引に引っ張っていく時代は過ぎ去ろうとしています。元マッキンゼーの経営コンサルタントで『ティール組織』(英知出版)の著者であるフレデリック・ラルーは、組織には「レッド(赤)」「アンバー(琥珀)」「オレンジ」「グリーン」「ティール(青緑)」の五つのフェーズ(段階)があり、最も進化した第5段階が「ティール(青緑)」組織だとしています。非常に簡単に説明すると、レッドは「恐怖による統治(マフィア、ギャング)」、アンバーは「厳密な上意下達、ピラミッド構造(軍隊)」、オレンジは「実力主義・能力主義に基づくピラミッド構造(企業)」、グリーンは「階層構造は残るが、個を重視した人間らしい組織(家族)」、ティールは「一つの生命体のように、平等に責任と権限が与えられ、進化を続ける組織」のことです。体育会組織に当てはめて考えると、昔ながらの体育会は「アンバー」、やや先進的な体育会は「オレンジ」という感じでしょうか。「オレンジ」の次は「グリーン」と考えると、これから進むべき方向が見えてくるかもしれません。

日経BOOKプラス 2022年5月20日付の記事を転載]

最強集団を築き上げた「心理学的手法」とは

 「学生ラグビーの最強集団」である帝京大学ラグビー部。その強さの秘訣は、26年間、監督を務めてきた岩出雅之氏のチームビルディング術とモチベーションマネジメント力にあります。
 心理的安全性、成長マインドセット、ナッジ、心理バイアス、フロー、自己肯定感、OODA(ウーダ)ループ、マズローの欲求5段階説、ハーズバーグの2要因理論、内発的動機(ときには脳科学も)――。これらの手法を、ラグビー部の組織運営や人材育成、組織文化の形成に次々と取り入れ、実際に大きな成果を出しています。岩出氏が常勝集団を築き上げたノウハウを、ビジネスリーダーや経営者向けに、実践的かつ分かりやすく解説しました。

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この記事はシリーズ「帝京大ラグビー部・岩出雅之前監督が語る「逆境の乗り越え方」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。